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Surface soundについて | ヴァイオリン掲示板

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Surface soundについて

投稿日時:2009年09月03日 20:55
投稿者:catgut(ID:mDFQYAA)
英語圏のヴァイオリン奏者は日常的に使っていると考えられる
"Surface sound"という言葉ですが、なぜか日本語には直接相当する言葉がありません。あえて言えば「裏返った音」とか「倍音」に当たるようです。このスレッドでは"Surface sound"に関して情報交換させて頂きたいと思います。

英語圏では以下のような音について"Surface sound”と言うように
思われます。英語圏でヴァイオリン教育を受けた方がいらっしゃいまし
たら情報提供していただけると幸いです。よろしくお願いします。

・アタックに失敗して「裏返った音」
・スル・ポンティチェロで弾いた時に混じるキーキーした「高音」
・軽い弓圧で全弓を弾き切った時の最後に「変わる音色」
・E線を軽く弾いて「裏返えった音」
・軽い弓圧で速く弾いた時の「倍音の混じる音」
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Re: Surface soundについて

投稿日時:2009年09月03日 22:31
投稿者:catgut(ID:mDFQYAA)
surface soundの起きる仕組みについて簡単に説明します。

通常、弓で弦をこする時は、弦は「ヘルムホルツ振動」という特殊な振動をしており、弦は「く」の字型になって、「く」の尖った部分が駒から始まってナットに届き、さらに1周して駒に戻ってくるような「円運動」をしています。この1サイクルの間に、弓毛と弦は1回のみ接触(stick)と分離(slip)を行います。

ところが弓圧が弱いと、この1サイクルの間に2回(弱さによっては3回以上)弓毛は弦に触れてしまい、弦の振動を増やして音色を少し変えたり、1オクターブ高い音高にしてしまいます。これが「surface sound」です。
(もし誤りや補足などがありましたらよろしくおねがいします)

ヴァイオリンを弾く者は弦の同じ場所で同じ音量で開放弦を弾いても、
・弓圧が強く弓速が遅い
場合と、
・弓圧が弱く弓速が速い
場合では音色が変わることを経験上知っています。弦の材質(捩じれやすさなど)や弦の振動方向も影響しますが上記の仕組みの影響もあると思われます。

同じサウンディングポイントで弾く場合、弓圧が弱く、弓速が速い奏者の音色は、弓圧が強く、弓速が遅い奏者に比較して全般的に「倍音が豊かな」音色に聞こえると考えられます。ハイフェッツの弓速の速い音が倍音豊かに聞こえたり、鋭く聞こえたりするのであれば、surface soundが貢献している可能性があります。surface soundが発生する条件(弓圧・弓速)については、以前紹介した論文で実測されています。

これはあくまで夢想で根拠はありませんが、もし人間に心地よいsurface
soundが発生しやすいオールド楽器や弓が存在するのであれば、銘器の音の秘密の一つかもしれません。
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Re: Surface soundについて

投稿日時:2009年09月04日 05:02
投稿者:やはりこんなスレ立てましたね?(ID:NUZwmDc)
ハイフェッツの楽器を調整した経験のあるLA近郊の楽器屋(製作家)曰く「なんじゃそりゃ?そんな音で曲弾くのか?」でした。
ちなみに、Surface soundなんて言葉、私の周辺のプレイヤーに限定すると日常的に使っている言葉じゃないですねぇ。
ひっくり返った音?と言った人も居るし、Surface noise(擦過音?)じゃないの?と言った人も居ました、また安楽器に特徴的な深みの無い音のこと?と言った人も居ました。
あくまで私の知人に限定した話ですが。
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Re: Surface soundについて

投稿日時:2009年09月04日 07:53
投稿者:catgut(ID:NZAVFFQ)
ご指摘の通り”surface sound"という表現は地域性や教育メソッドによって使ったり使わなかったりするのかもしれません。引き続き情報提供お願いします。

surface soundについては誤解があるようですね。日本語では「倍音ないし倍音に富んだ音」という表現が合うケースもあります。

すでに引用しましたが2004年にmaestronetで以下のようにsurface soundが使われています。

ttp://www.maestronet.com/forum/lofiversion/index.php?t251017.html
Me too. Now that my teacher has me doing long slow bows, 3-4 octave scales, I'm noticing a surface sound high up. The real sound probably projects out over the surface sound. But I've heard that some surface sound is good, and that Heifetz supposedly had a lot of it. I suppose it is high frequency sound that carries out further, but I don't know.

「ハイフェッツはsurfarce soundが多くあったと言われ、(surface soundは高い周波数の音なので)音の遠達性があったのでは」というような話ですね。
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Re: Surface soundについて

投稿日時:2009年09月04日 09:42
投稿者:検索アシスタント(ID:cYBJOIA)
検索アシスタントです。Googleにて
「"surface sound" site:maestronet.com 」
と入力すると、マエストロネット内の「surface sound」という記述がぜーんぶ出てきます。

あれ??あれだけ膨大なマエストロネットの掲示板のやり取り中、この言葉が出てくるのはたった2人の書き込みだけ??

C氏が確信持って言うほどのことだからそんな筈はない!! きっとGoogleの検索エンジンのバグだろう。。。
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Re: Surface soundについて

投稿日時:2009年09月04日 20:19
投稿者:catgut(ID:NZAVFFQ)
英語圏の一部のヴァイオリン奏者に"surface sound"という言葉が普及した原因があっさり分かりました。なんとWoodhouse教授自身が広めていました。

Woodhouse教授自身が”surface sound"という言葉を使った一般向けのヴァイオリンの弦の振動の解説記事を書いており、これが大変有名になって多くのヴァイオリン関係サイトからリンクされています。確かにもの凄く分かりやすい記事です。

英語版wikiのViolinからもリンクされています。
ttp://en.wikipedia.org/wiki/Violin

Woodhouse教授の解説記事
ttp://plus.maths.org/issue31/features/woodhouse/index.html
Why is the violin so hard to play?

日本で広まっていないのは、最近英語圏の一部で使われるようになった一種の新語だからですね。記事の中で「西洋のクラシックのヴァイオリニストはsurface soundを許容できない」ということを書いていますが、もちろんこれは弓圧が弱すぎて妙な音になった状態の意味です。
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Re: Surface soundについて

投稿日時:2009年09月05日 15:04
投稿者:通りすがり(ID:NkZAIkY)
Surface soundって言葉はいつごろ発明されたのですか?
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Re: Surface soundについて

投稿日時:2009年09月05日 16:45
投稿者:catgut(ID:NZAVFFQ)
英語圏のヴァイオリン奏者の間でsurface soundが実際にどのように使われているのか知りたくてこのスレッドを立てたので、引き続き情報提供していただきたいのですが、私が調べた範囲では以下の通りです。

Woodhouse教授はすでに1978年の共著論文
The acoustics of stringed musical instruments.
の中で”surface sound"という言葉を使用しています。
ここでは「スル・ポンティチェロで出るような基本周波数が弱い音」と説明しています。

ttp://www2.eng.cam.ac.uk/~jw12/JW_publication_list.html

For definiteness, suppose that the position and speed of the bow are
kept constant, while the player gradually increases the force from
zero. At first he elicits a surface sound in which the fundamental is weak, as in sul ponticello playing. He will then find a rather sharply defined minimum bow force at which the Helmholtz motion starts - musicians call this 'getting into the string'

私が見た用例では「裏返った音」の意味で使っている人が多いと思います。
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Re: Surface soundについて

投稿日時:2009年09月05日 18:17
投稿者:catgut(ID:NZAVFFQ)
ちなみに以下の論文に目を通していただくと分かりますが、ヴァイオリン演奏や製作に直接影響する「実用的」な研究が多くあります。
ttp://www2.eng.cam.ac.uk/~jw12/JW_publication_list.html

Woodhouse教授は演奏家や製作者と協力して、本気で音響学をベースに
演奏方法や製作技術の向上を目指しているようです。

例えば松脂に関する研究では、意外と摩擦熱で松脂の性質が変わり、
しばらく弾いているうちに操作性や音色(スティックスリップが変わるので)までが変わってしまうことがわかってきたそうです。数十分弾いているうちに音色が変わるような現象があれば、松脂の摩擦熱が関係している可能性が高いということになります。

またダブルスリップ現象とウルフ音は深い関係があり、ダブルスリップが起きはじめるくらい弓圧を弱めるとウルフ音が大きくなるといった関係があるそうです。

またスティックスリップ現象の研究を通じて、単に音色だけではなく良いスティックスリップが起きるヴァイオリンは操作性の良いヴァイオリンと位置付けて製作に役立てようとしています。
[40986]

Re: Surface soundについて

投稿日時:2009年09月05日 21:26
投稿者:通りすがり(ID:NkZAIkY)
>しばらく弾いているうちに操作性や音色(スティックスリップが変わるので)までが変わってしまう

catgut様はこのようなご経験がおありでしょうか。自分は未経験です。
プロの演奏会などで、気付いたこともありませんが、皆さまいかがですか?
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