[11380]
駒の角度
投稿日時:2004年03月28日 01:52
投稿者:甘亭(ID:NSlWcSM)
趣味で20年ほどバイオリンを弾いている者です。
ところで、皆様のバイオリンの駒の角度、横から見たときの表板に対する角度はどうなっていますか?(ここでの駒の角度とは、テールピース側の駒と表板のなす角度のことです)
私のバイオリンの駒は、駒の足が最大の接地面積を得られる状態にすると、駒の角度は直角よりも少し指板側に傾いています。分度器で測ると、テールピース側の駒と表板のなす角度は95~100度くらいになっています。
実はつい先日、プロの奏者が多数出入りしている某有名工房で、駒の交換をしたのです。以前の駒は、駒と表板との角度が直角のときに最大の接地面積が得られていましたし、一般的に、駒は表板に垂直に立てるようにと言われてますので、弦を張り替えた後など駒が指板側に傾いてきたら(駒が指板側におじぎしてきたら)、駒が垂直に立つように自分で微調整してきました。
今回交換してもらった駒を垂直に立てると、指板側の駒の足が少し浮き上がってしまいます。駒を完全に垂直にすると、薄い紙が約1ミリ入るくらい、駒の足(指板側)が浮き上がってしまいます。
そこで、再びその工房に楽器を持って行ってこの件について尋ねたところ「以前は駒が垂直のとき最大の接地が得られるように駒の足を削るのが一般的だったが、最近は以前よりも少しだけ指板側に傾いた状態のとき最大の設置が得られるように調整する人もいる。私も最近この方法を採用するようになったが、音響的に良い効果を得ている。ところで、実際に弾いてみて何かご不満はございましたか?」と言われました。
また「従来のようにテールピース側の駒を垂直にするように調整すると、弦の圧力が駒の足の後部(テールピス側)に多くかかる。だから、駒の足の前部(指板側)の接地圧が低下し、駒の足の接地圧が全体に均一でない状態になっている。今回のように、駒が少し指板側に傾いた状態に調整してやると、弦の圧力が駒の足の前部と後部に等しくかかるので、駒の足の接地圧が全体に均一化し、より良い音響が得られる。」と説明してくれました。
たしかに、以前の駒よりも音がクリアになっているし、糸溝の加工精度が素晴らしくて調弦が非常にスムーズになりましたし、音響的には何も不満は感じてないばかりか満足しているので、それ以上つっこんだ議論はせずに帰ってきました。
これまでに、違う工房で、2回ほど駒を交換したことがありますが、そのときは、駒は垂直に立てたときがベストな状態でした。また、工房の職人さんも、弦を張り替えた後は駒が指板側におじぎしてくるので、垂直になるように駒の角度を調整するように、と言っていました。そんなこともあり、駒は垂直がベストというのが自分の中で完全に常識化してしまっているので、今の駒を見ると駒が指板側に少しおじぎした「良くない状態」のように見えてしまいます。
自分で駒の角度を調整するときは、以前は垂直かどうかを目安に調整していました。駒の角度が垂直かどうかは、定規を当てて見れば一目で判定できるので楽だったのですが、今回の駒は、駒の足の接地状態が最大に見える状態になるように調整しなければならないので、以前よりも駒の角度の微調整(加減)が難しくなりました。
自分はつい先日まで全然知らなかったのですが、いつ頃からこういう垂直でない駒(テールピース側の駒と表板が垂直でない駒)が作られるようになったのでしょうか?また、以前の「駒は垂直に」という常識は、いまや常識ではなくなってしまったのでしょうか?
どなたかこの件についてご解説いただけるとありがたいです。よろしくお願いいたします。
ところで、皆様のバイオリンの駒の角度、横から見たときの表板に対する角度はどうなっていますか?(ここでの駒の角度とは、テールピース側の駒と表板のなす角度のことです)
私のバイオリンの駒は、駒の足が最大の接地面積を得られる状態にすると、駒の角度は直角よりも少し指板側に傾いています。分度器で測ると、テールピース側の駒と表板のなす角度は95~100度くらいになっています。
実はつい先日、プロの奏者が多数出入りしている某有名工房で、駒の交換をしたのです。以前の駒は、駒と表板との角度が直角のときに最大の接地面積が得られていましたし、一般的に、駒は表板に垂直に立てるようにと言われてますので、弦を張り替えた後など駒が指板側に傾いてきたら(駒が指板側におじぎしてきたら)、駒が垂直に立つように自分で微調整してきました。
今回交換してもらった駒を垂直に立てると、指板側の駒の足が少し浮き上がってしまいます。駒を完全に垂直にすると、薄い紙が約1ミリ入るくらい、駒の足(指板側)が浮き上がってしまいます。
そこで、再びその工房に楽器を持って行ってこの件について尋ねたところ「以前は駒が垂直のとき最大の接地が得られるように駒の足を削るのが一般的だったが、最近は以前よりも少しだけ指板側に傾いた状態のとき最大の設置が得られるように調整する人もいる。私も最近この方法を採用するようになったが、音響的に良い効果を得ている。ところで、実際に弾いてみて何かご不満はございましたか?」と言われました。
また「従来のようにテールピース側の駒を垂直にするように調整すると、弦の圧力が駒の足の後部(テールピス側)に多くかかる。だから、駒の足の前部(指板側)の接地圧が低下し、駒の足の接地圧が全体に均一でない状態になっている。今回のように、駒が少し指板側に傾いた状態に調整してやると、弦の圧力が駒の足の前部と後部に等しくかかるので、駒の足の接地圧が全体に均一化し、より良い音響が得られる。」と説明してくれました。
たしかに、以前の駒よりも音がクリアになっているし、糸溝の加工精度が素晴らしくて調弦が非常にスムーズになりましたし、音響的には何も不満は感じてないばかりか満足しているので、それ以上つっこんだ議論はせずに帰ってきました。
これまでに、違う工房で、2回ほど駒を交換したことがありますが、そのときは、駒は垂直に立てたときがベストな状態でした。また、工房の職人さんも、弦を張り替えた後は駒が指板側におじぎしてくるので、垂直になるように駒の角度を調整するように、と言っていました。そんなこともあり、駒は垂直がベストというのが自分の中で完全に常識化してしまっているので、今の駒を見ると駒が指板側に少しおじぎした「良くない状態」のように見えてしまいます。
自分で駒の角度を調整するときは、以前は垂直かどうかを目安に調整していました。駒の角度が垂直かどうかは、定規を当てて見れば一目で判定できるので楽だったのですが、今回の駒は、駒の足の接地状態が最大に見える状態になるように調整しなければならないので、以前よりも駒の角度の微調整(加減)が難しくなりました。
自分はつい先日まで全然知らなかったのですが、いつ頃からこういう垂直でない駒(テールピース側の駒と表板が垂直でない駒)が作られるようになったのでしょうか?また、以前の「駒は垂直に」という常識は、いまや常識ではなくなってしまったのでしょうか?
どなたかこの件についてご解説いただけるとありがたいです。よろしくお願いいたします。
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Re: 駒の角度
投稿日時:2004年03月28日 10:17
投稿者:pochi(ID:KUVQZGE)
興味深い話題ですね。
駒は、立てる場所が決まって居ますから、其の部分の水平を取って、其処に絃を張らずに駒を立ててみた状態と同じ角度に絃を張った状態の時もすれば良いと思います。
駒を立てる角度が違うと、絃長が変るので、少し違和感があるかも知れません。
美意識としてどうしても許せないのなら、職人にその旨伝えるべきでしょう。
諸楽器職人の御見解を待ちましょう。
駒は、立てる場所が決まって居ますから、其の部分の水平を取って、其処に絃を張らずに駒を立ててみた状態と同じ角度に絃を張った状態の時もすれば良いと思います。
駒を立てる角度が違うと、絃長が変るので、少し違和感があるかも知れません。
美意識としてどうしても許せないのなら、職人にその旨伝えるべきでしょう。
諸楽器職人の御見解を待ちましょう。
[11389]
Re: 駒の角度
投稿日時:2004年03月28日 15:44
投稿者:yam(ID:YUJwSVA)
N.H.フレッチャー、T.D.ロッシング「楽器の物理学」(岸憲史他訳、シュプリンガー・フェアラーク東京)の第十章「擦弦楽器」の10.8「駒」のp.296によると、
Hacklinger(1980)はさらに駒を垂直からわずかばかり、αとβ(図10.20)が等しくなるように傾けることを推奨している。この姿勢は駒の両側の張力を等しくする。
という記述があり、図をみると駒と弦のなす角度が両側で等しくなるようになっています。(従って駒はわずかにテールピース側に傾いていることになる)
Hacklinger(1980)はさらに駒を垂直からわずかばかり、αとβ(図10.20)が等しくなるように傾けることを推奨している。この姿勢は駒の両側の張力を等しくする。
という記述があり、図をみると駒と弦のなす角度が両側で等しくなるようになっています。(従って駒はわずかにテールピース側に傾いていることになる)
[11391]
Re: 駒の角度
投稿日時:2004年03月28日 16:40
投稿者:甘亭(ID:NFOHAIA)
pochi様、yam様、明快なお答えをいただきまして、ありがとうございます。
yam様のおっしゃる本では、テールピース側に駒を傾けるとなっているとのことですね。(テールピース側の駒と表板のなす角度が90度未満ということですね)
私の駒は、その理論とは逆に指板側に少々傾いております。(テールピース側の駒と表板のなす角度が95度程度)
私の友人達の楽器の駒は、大半がテールピース側が垂直になっています。私の楽器と同じようにテールピース側の駒と表板のなす角度が90度から100度の楽器は少数派のようです。
「テールピース側に傾いている駒」というのは、私は1度も見たことがありませんが、yam様のお持ちの本の図では、やはり「テールピース側に」駒が傾いているのでしょうか?お手数ですが、今一度、確認していただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
yam様のおっしゃる本では、テールピース側に駒を傾けるとなっているとのことですね。(テールピース側の駒と表板のなす角度が90度未満ということですね)
私の駒は、その理論とは逆に指板側に少々傾いております。(テールピース側の駒と表板のなす角度が95度程度)
私の友人達の楽器の駒は、大半がテールピース側が垂直になっています。私の楽器と同じようにテールピース側の駒と表板のなす角度が90度から100度の楽器は少数派のようです。
「テールピース側に傾いている駒」というのは、私は1度も見たことがありませんが、yam様のお持ちの本の図では、やはり「テールピース側に」駒が傾いているのでしょうか?お手数ですが、今一度、確認していただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
[11393]
Re: 駒の角度
投稿日時:2004年03月28日 19:19
投稿者:トマーソ・ピラー愛用者(ID:FViZIVY)
ズボラなイタリア人や中国人の楽器の駒をたくさん見てごらん。垂直に立っている駒が多いのは確かだけど、指板側におじぎしている駒も結構多く見かけるよ。さすがに、テールピース側におじぎしている駒はごく少数だね。
几帳面な日本人の楽器は、テールピース側が垂直になっているのがほとんどだね。
この辺は、pochiさんが言っている職人の「美意識」の問題なんでしょうな。
自分の愛器トマーソ・ピラー1996年製の駒(ピラー本人の作成した駒)は、ほんのちょっと指板側に傾いてます。機能的・音響的な問題を感じたことはありません。
几帳面な日本人の楽器は、テールピース側が垂直になっているのがほとんどだね。
この辺は、pochiさんが言っている職人の「美意識」の問題なんでしょうな。
自分の愛器トマーソ・ピラー1996年製の駒(ピラー本人の作成した駒)は、ほんのちょっと指板側に傾いてます。機能的・音響的な問題を感じたことはありません。
[11401]
Re: 駒の角度
投稿日時:2004年03月29日 01:14
投稿者:yam(ID:YUJwSVA)
弦と駒の表面のなす角度がテールピース側と指板側で等しくなるように調整するということです。駒を表板に垂直に立てるとふつう指板側の角度のほうがテールピース側の角度より少し大きいので、駒の中心軸をややテールピース側に傾けると弦と駒のなす角度が等しくなります。
駒を横から見ると足元のほうが太くなっているので中心軸がテールピース側に傾いたからといって駒の表面と表板がなす角度が90度以下になるとは限らないと思います。
説明がわかりにくいですか?
[11403]
Re: 駒の角度
投稿日時:2004年03月29日 08:52
投稿者:トコトコ(ID:FiWWNiA)
駒の角度のテーマとは関係なくてすみませんが、トーマソ・ピラー愛用者さん、トーマソ・ピラーという製作者はチェコの方ですか。何年か前、毎年開催される手工弦楽器展で、たしかトーマス・ピラー製作というのがあって、弾いてみてすごくよかったのを覚えています。展示の係の方にきいたらチェコの人だということでした。そのときはいろいろな楽器を見に行っただけで買うつもりはなかったので値段はききませんでしたが、感じから高そうに思われました。今でも強く印象に残っています。
どんな楽器かご紹介くださるとありがたいのですが。
どんな楽器かご紹介くださるとありがたいのですが。
[11408]
Re: 駒の角度
投稿日時:2004年03月29日 12:11
投稿者:甘亭(ID:MThAl2A)
yam様、再度のお返事ありがとうございます。テールピース側に傾けるという理論もあるんですね。ただ、そういう駒はほとんど見たことがないので、実践してらっしゃる職人さんは少なそうですが・・・。
[11417]
Re: 駒の角度
投稿日時:2004年03月29日 18:36
投稿者:トマーソ・ピラー愛用者(ID:FjIVIjY)
トマソ・ピラーは、ヴィエニャフスキー・ヴァイオリン製作コンクールの金賞受賞者で、チェコの名工です。お父さんのウラディーミル・ピラーも有名な製作家です。
8-10年ほど前までは130万円で売られていたと思います。現在はもう少し高くなっていると思います。性能的には200万円のイタリアの楽器に負けませんよ。音色も見た目も派手さはありませんが、全体にバランスが良く、自然な(素朴な)飽きのこない美しさがあります。
ズボラなイタリア人や中国人の楽器よりも全体の作りがしっかりしているし、糸巻きや駒の精度も高いので、安心して使用できます。イタリア人も中国人も、本体は丁寧に作ってますが、なぜか、パーツ類の取り付け精度や加工精度が、とにかくズボラなんですよね。
精度に関しては、几帳面な日本人の楽器の方がもっと精度が高いですが、チェコの楽器は、几帳面というよりは丁寧という感じで、温かみとか木のぬくもりを感じさせてくれるのが好きなところです。
駒の角度のスレッドで全然違う内容をしゃべっちゃいましたが、悪しからず。
8-10年ほど前までは130万円で売られていたと思います。現在はもう少し高くなっていると思います。性能的には200万円のイタリアの楽器に負けませんよ。音色も見た目も派手さはありませんが、全体にバランスが良く、自然な(素朴な)飽きのこない美しさがあります。
ズボラなイタリア人や中国人の楽器よりも全体の作りがしっかりしているし、糸巻きや駒の精度も高いので、安心して使用できます。イタリア人も中国人も、本体は丁寧に作ってますが、なぜか、パーツ類の取り付け精度や加工精度が、とにかくズボラなんですよね。
精度に関しては、几帳面な日本人の楽器の方がもっと精度が高いですが、チェコの楽器は、几帳面というよりは丁寧という感じで、温かみとか木のぬくもりを感じさせてくれるのが好きなところです。
駒の角度のスレッドで全然違う内容をしゃべっちゃいましたが、悪しからず。
[11418]
Re: 駒の角度
投稿日時:2004年03月29日 19:22
投稿者:Suzuchin(ID:QIdUYQQ)
初めて聴いた話で、おもしろいです。
私、Tomas Pilar の作った駒の付いた、Vladimir Plar のヴィオラ愛用者です。この話を聞くまでは作りの悪い駒だと思って、作り直すつもりでした。
駒はいままでは裏面が垂直になるよう直角定規を指板側から、テールピース側から、を左右からみて、計4回当てて調整していました。すると足が浮き上がってしまいました。接地面がぴったり表板に合うには前面が垂直になるようです。すると、この駒は日本の製作者が作った駒よりずいぶん指板側に傾いているように見えます。けずりかたも裏側をカーブをほとんど付けずに平らにけずっているように思います。
蛇足ながら、駒の接地圧が均等でないと、新しい楽器では足の底面の片側が浮き気味になって夏暑いときニスが柔らかくなってずるーとずれることがあります。また、駒がだんだん曲がってきて、修正しようとしたら折れることがあります。
VladimirさんはTomas PilarにVn製作を教えた父上でPilar family で最も有名な方です。Tomas Pilarさんは雑誌Stradの表紙を飾っていました。内容は見てませんが、まだ在庫があるかもしれませんよ。V. Pilarの楽器はすばらしいの一語につきます。パワフル ブリリアントのなかに柔らかさを持ったとでもいいましょうか。私見ながら同格のイタリアンと比べると値段1/3でしょう。チェコから試奏もせず直接買いました。横道にそれついで。
私、Tomas Pilar の作った駒の付いた、Vladimir Plar のヴィオラ愛用者です。この話を聞くまでは作りの悪い駒だと思って、作り直すつもりでした。
駒はいままでは裏面が垂直になるよう直角定規を指板側から、テールピース側から、を左右からみて、計4回当てて調整していました。すると足が浮き上がってしまいました。接地面がぴったり表板に合うには前面が垂直になるようです。すると、この駒は日本の製作者が作った駒よりずいぶん指板側に傾いているように見えます。けずりかたも裏側をカーブをほとんど付けずに平らにけずっているように思います。
蛇足ながら、駒の接地圧が均等でないと、新しい楽器では足の底面の片側が浮き気味になって夏暑いときニスが柔らかくなってずるーとずれることがあります。また、駒がだんだん曲がってきて、修正しようとしたら折れることがあります。
VladimirさんはTomas PilarにVn製作を教えた父上でPilar family で最も有名な方です。Tomas Pilarさんは雑誌Stradの表紙を飾っていました。内容は見てませんが、まだ在庫があるかもしれませんよ。V. Pilarの楽器はすばらしいの一語につきます。パワフル ブリリアントのなかに柔らかさを持ったとでもいいましょうか。私見ながら同格のイタリアンと比べると値段1/3でしょう。チェコから試奏もせず直接買いました。横道にそれついで。
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