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プリムローズの真意は、ブロッホ?ブルッフ? | ヴァイオリン掲示板

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楽曲・楽譜 8 Comments
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プリムローズの真意は、ブロッホ?ブルッフ?

投稿日時:2006年12月12日 23:11
投稿者:ららトーク(ID:M0ZjSBA)
この掲示板では初めての投稿になります。
ららトークと申します。

以下の質問があるのですが、ご回答頂けたらと思います。

質問:

プリムローズのヴィオラ奏法という本の206ページに以下のような
記述がありますが、プリムローズの真意はブロッホなのかブルッフなのか
どちらなのでしょうか。

(本文引用)----
偉大なヴァイオリニストにして、どれだけの人がブロッホのト短調
の協奏曲を、他にブロッホのニ短調の協奏曲だって同じくらい、
あるいはより以上に心を捉える美しい曲なのに、1度も演奏されないでいて
、特定の作品だけを繰り返し弾くように求められるのでしょう?
この協奏曲を何回か知りませんが、それを最後に演奏した人物は、たしかに
イザイだったと思います。
----(引用終り)

この文章を素直に読むと、ブロッホ(Bloch)ではなく、ブルッフ(Bruch)の
翻訳間違いではないのかと思うのですけど、ブルッフのバイオリン協奏曲は
演奏されないというほどではないので、本当にブロッホである可能性も
あると思うのです。ただし、ブロッホにト短調やニ短調のバイオリン協奏曲
はないと思っていますが。
プリムローズとブロッホは共にイザイにバイオリンを学んでおり親交が
あるので実際どうなんでしょうか。

ちなみに本件について出版社に質問してみたところ、ご担当者がご多忙で
あるということで回答が保留されています。

いずれにしても、ブロッホのバイオリン協奏曲やバイオリンソナタ2番は、
現在ではあまり演奏されないものの、マニア的には、ものすごい傑作である
との評価が高いらしいので、一度聴いてみたいと思っております。
[30737]

Re: プリムローズの真意は、ブロッホ?ブルッフ?

投稿日時:2006年12月14日 21:29
投稿者:匿名希望X(ID:NCdoYZg)
ひえーーー、くわばらくわばら……
ttp://www.amazon.co.jp/gp/product/0198161956
で原書を入手されるよう祈っています。
「責任ある回答」は出来ません。
ブロッホの作品は大好きですよ。
[30743]

Re: プリムローズの真意は、ブロッホ?ブルッフ?

投稿日時:2006年12月15日 12:16
投稿者:ららトーク(ID:MSmTdDk)
匿名希望Xさんへ。

ご回答ありがとうございます。原書の所在も検索してくださり助かりますです。

ところで、誤解があるといけませんので、質問の意図を以下に示します。

●質問の意図

「責任ある回答」は求めていませんし、翻訳者やインタビュアのミスを指摘するのが目的ではありません。興味のある視点は純粋に音楽史についてのみです。ここは、推理小説を読むような感じで楽しむこととしましょう。

原本はいずれ調べるとして、この矛盾だらけの記述は、とても興味深いのです。
 
類推してみると。

 1.ブロッホであった場合

ブロッホに作品を委託し、初演もしていたプリムローズはブロッホの作品を高く評価していたかもしれず、この記述はまっとうなもの。ただこの場合、プリムローズがブルッフの作品とブロッホを混同して回答していることになり、これはご愛嬌ですかね。

それと最後に演奏したのがイザイという記述がとても気になるのですね。
イザイはブロッホの協奏曲を本当に演奏したのか(年代的にありえるのか?)
ブロッホの協奏曲はシゲティが初演し、レコーディングもしているはずなのですが、あえて無視しているのか。
だとすると、シゲティ、プリムローズともに20世紀の作品紹介に熱心な演奏家ですし、バルトークにも作品を委託している。このところで、ライバル関係にあったのではないかと考えると興味がわきます。

2.ブルッフであった場合

ブルッフは、ユダヤ人に関連する作曲家ということでナチドイツから演奏を禁止されていた期間があり、それでしばらく忘れられていたということがあったそうなので、いつごろから復活演奏がされだしたのか。プリムローズは復興に力を貸したのかどうか。
 あるいは、プリムローズと関係なく、戦後、メニューインやフルトヴェングラーはドイツとユダヤ人との和解を図るための努力をしているので、その成果もあったのかもという推理です。

あるいは、たぶんこの可能性が高いのですけど、
ブルッフの協奏曲のト短調は演奏されるが、ニ短調は演奏機会がかなり少ないと述べているだけの話。これだと、何だこの程度のことかということでがっかりですけどね。

以上です。いずれにしても、この変な記述のおかげで随分とブロッホとブルッフについての知識が増えたので感謝しておりますが、他に情報をいただければ幸いです。
[30751]

Re: プリムローズの真意は、ブロッホ?ブルッフ?

投稿日時:2006年12月16日 09:28
投稿者:匿名希望X(ID:NCdoYZg)
原書は当然私も持っていません。
また、訳書は存在も知りませんでした(不勉強な;;;;)。
教えていただいて感謝しています。
ところで、ご参考になるかは分かりませんけれど.................

紹介したAmazonのサイトでは原書の幾つかのページを読めます。
243ページの索引も読めます。
そのなかに
"Musical works cited and referred to in this book"
という一覧があります。
さて問題の "Bloch V.S. Bruch"
ですが……

…前略…
Berlioz
Harold in Italy 180,196
Bliss
Viola Sonata 2
Bloch
Suite 171,211
Borodin
'Nocturne' from D Major Quartet(incl.Primrose transcription)225
Brahms
Viola Sonata op.120, 185,189,196
String Quintet in G Major 120
Violin Concerto 212 ff
Britten
Lachrymae 112,137,156
Bruch
Violin Concerto in D Minor 213
Violin Concerto in G Minor 213
Campagnoli
Etudes 157
Forty-one Caprices 38,118
…後略…

原著のインタビューおよび索引が正確であると仮定すると、
軍配はブルッフに上がるのでは?
[30758]

Re: プリムローズの真意は、ブロッホ?ブルッフ?

投稿日時:2006年12月16日 19:56
投稿者:ららトーク(ID:M0ZjSBA)
匿名希望Xさん。

いろいろ調査してくださりありがとうございます。
感謝いたします。

ブロッホ、ブルッフの両方の協奏曲を聴いてみた結果、おそらく結論は、ブルッフであると確信しました。それほど、ブルッフの2番の協奏曲はすばらしい作品で、個人的には、ブラームスやチャイコフスキーの協奏曲に匹敵するくらいの音楽芸術作品だと思いました。ただ、演奏がハイフェッツでしたから、そう思ったのかもしれませんのでその分割り引く必要があるとは思います。でも、そうであってもこのハイフェッツのあまりに美しい過ぎるバイオリンの音に聴いていて感動のあまり不覚にも涙が出ました。これを聴かずして人生を終えてしまうのがもったいないくらいのありがたい演奏です。おそらく彼の残した録音のなかでもベスト5に入るくらいの名演だと思います。

ブルッフの2番のコンチェルトに関しては、プリムローズが語っているように、相当すごい作品にもかかわらず、ほとんどCDがないのですね。でもハイフェッツは残してくれました。このCDは私の宝物です。この演奏のバイオリンの音を目指して練習に励む事とします。こうしたすごい作品なので、1番ばかりでなく2番も演奏会で頻繁に取り上げてほしいものです。

ブロッホの方は、こちらも良い曲で、バイオリンパートの扱いがうまいですね。技法とメロディの歌わせ方のバランスがすてきです。ポルタメントの使い方がキモのような気がします。曲調は、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ+伊福部昭+ハリウッド映画ベンハーという感じで、「ローマ皇帝参上」といったノリの近現代音楽としてはわかりやすい音楽ですね。作曲家の個性も十分に感じられます。でも私の好み的には、オネゲルとかルーセル、ベルクのような渋みがもう少しほしい気がします。
また、プリムローズ的には、ヒンデミットとかバルトーク的な要素を評価しているので、ブロッホを評価していたかどうかは少し微妙だと思いました。

以上、ご協力いろいろとありがとうございました。
[30760]

Re: プリムローズの真意は、ブロッホ?ブルッフ?

投稿日時:2006年12月18日 00:35
投稿者:バク(ID:Q2VzIlA)
ららトークさんへ。ブルッフの第2番のヴァイオリン協奏曲は、ほんといい曲ですね。ハイフェッツの録音はこの曲の決定盤ではないかと思います。憂いを帯びた音で始まる出だしからして、ググッと胸を締め付けられます。
自分は、ブルッフの1番の協奏曲も好きですが、2番の方がもっと好きです。
あと、ハイフェッツというと、同じくブルッフのスコットランド幻想曲の録音も泣ける名演ですね。
オケを軽々と飛び越えて聞こえるハイフェッツの輝かしい音色は、ヴァイオリン弾きなら誰でも憧れる音ですね。唸るような迫力のある低音、キラキラと輝かしくクリアな高音、あぁ凄い!、とひたすら感服させられます。
[30761]

Re: プリムローズの真意は、ブロッホ?ブルッフ?

投稿日時:2006年12月18日 01:48
投稿者:ららトーク(ID:M0ZjSBA)
パクさん。はじめまして。

ブルッフの2番、やはりわかってもらえる人には、わかってもらえるものですね。うれしいです。ブルッフについては、いろいろと文献を調査中でして、その中でおもしろいことがわかりました。

ブルッフの2番がなぜ演奏されないのかという記述を見つけたのです。その文献は、音楽の友社から出ている最新名曲解説全集の協奏曲2巻です。
これによると、スコアとパート譜を購入した者でないとこの曲の演奏はできないということになっていたそうで、これが影響しているのではないかという推測が解説に掲載されていました。
それにしても名曲解説全集で演奏されない理由まで書いてあるとは驚きでした。それほどの傑作だと著者も感じていたのでしょう。

それで知り合いのバイオリニストにちらっと質問してみたのですけど、最終楽章はかなり演奏が難しいらしいですね。献呈されたサラサーテもかなり手こずったのではないかという解説が購入したCDにも記載されていましたし。
難易度としては、チャイコフスキーよりは低いかなあと思うのですが、ショスタコーヴィチ、バルトークよりも難しかったりするのでしょうかね。
 ハイフェッツとかアッカルドのような凄腕の人でないと演奏が不可能なんですとなると妙に納得してしまいますが。まあこれはジョークです。
[30801]

Re: プリムローズの真意は、ブロッホ?ブルッフ?

投稿日時:2006年12月20日 23:58
投稿者:バク(ID:OFgTaJA)
ららトークさんへ。ブルッフの2番の協奏曲が演奏されない理由については、なるほどと思いました。
ヴュータンの協奏曲も、ヴァイオリン音楽としては非常に優れていて、聴いていて面白い曲だと思いますが、最近は、実演も録音もあまり行われなくなっています。
バッハ、ベートーヴェン、ブラームスのヴァイオリン曲は、ヴァイオリン音楽としてだけでなく、音楽として非常に優れた作品だと思いますが、ヴュータンやヴィエニャフスキーの協奏曲のようなヴィルトゥオーゾ的な作品は、ヴァイオリンの魅力をわかり易く示すことができるので、こうしたヴィルトゥオーゾ的でロマンティックな作品も、ヴァイオリン弾きは大事に引き継いで(弾き継いで)いく必要があるのではないかと思います。
残念ながら、自分はヴュータンを弾きこなすほどのテクがありませんので、自分自身で演奏してその魅力を広めることができませんが、友人・知人にCDを聞かせることで、ヴュータンやヴィエニャフスキーなどの浪漫派のヴィルトゥオーゾの作品の魅力を啓発するように努めています。
ブルッフの2番の協奏曲も素晴らしい曲だと思うので、ハイフェッツの極めつけの録音を友人・知人にも聞かせてみようと思います。
[30816]

Re: プリムローズの真意は、ブロッホ?ブルッフ?

投稿日時:2006年12月21日 23:38
投稿者:ららトーク(ID:M0ZjSBA)
バクさんへ。

ヴュータンの第4番協奏曲は傑作ですね。ベートーヴェンを尊敬していたこともあって、曲に深みもありますしね。たぶん、ブラームスが好きな人なら好きになれる作曲家と思います。
プリムローズの方もヴュータンを評価しています。プリムローズはビオラのレパートリーを増やすためにかなり努力した演奏家ですけど、こんなに努力しているのにバイオリニストはレパートリーが豊富なこともあってヴュータンのような良い曲であっても演奏しなくなっているというので、嘆いているのですね。もし、ヴュータンの曲がヴィオラ協奏曲ならダントツの傑作として演奏されていることでしょう。

ヴュータンは、音楽史的にも今イチ評価が低いのでもう少し高く評価してあげてほしい作曲家の一人です。ベートーヴェンのバイオリン協奏曲を有名にした功績もありますし、ベルリオーズの管弦楽法にも影響を与えているし、イザイの最も尊敬していた先生でもありますしね。

音楽史なんかみていると、ヴィルトゥオーゾの作曲家は音楽に深みがないとか馬鹿にされて書かれる場合が多いのですけど、本当にきっちりと聴いたり、楽譜を分析したり、後世への影響とかまじめに評価して書いているか、かなり疑問です。

ということで、いいかげんな評価に騙されないように、なるべく多くの作曲家の作品を聴くようにしているのですけど、個人的には、音楽史の方はもう少し正確な記述にしてほしいものと思っております。作曲家を中心にした音楽史と、バイオリンを中心とした音楽史ではかなり評価の視点が違っているのでびっくりしておりますから。