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ヴィブラートのかけ方について その2 | ヴァイオリン掲示板

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ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年02月16日 19:52
投稿者:catgut(ID:EAlId0M)
「ヴィブラートのかけ方について」のスレッドが長くなってきましたので、
新しいスレッドを作成しました。

今後はこちらでお願い致します。
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8 / 15 ページ [ 145コメント ]
[31827]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月04日 04:33
投稿者:jack(ID:aDSJGWA)
私の実験が引き合いに出されたので再度コメントしますが、No.1は奏者の意識としては「基準音の下へ」ですが上に飛び出しています。これは戻りによるオーバーシュートだと思います。No.3は奏者の意識としては「かなり下目」です。アンサンブルでは通常No.1と3の中間くらいになっていると思います。ソロや気分が高揚するとNo.2の「上向き」またはNo.4の「上下」になることもあると思います。

N○K交響楽団の永峰氏の「ストリング」3月号の記事はそれ自体で完結しており理解できますし疑義を挟む余地はありません。アンサンブルでは下向きにヴィブラートを掛けるようにと音大生に指導されているのです。

氏の所属するオケでセクションリーダーとして「ここは凄くソリスティックに弾かなくてはならない箇所だと思いますが、勢いあまって上向きにヴィブラートをかけないようにしましょう」と伝えた結果「バッチリでした。音程も合うしパワーはあるし」とも書かれています。皆が好き勝手に上向きの幅の広いヴィブラートを掛けると音程が合わずパワーも分散するのでしょうね。

「下向けへという指導は初心者向け」というお説は、音大生でアンサンブルの初心者向けということなら分かります(笑)。ソリスト向けには別の指導もあろうかと思います。

スレ主さまへ、
永峰氏の記事に疑問があれば推測や独自の解釈をされずに永峰氏へ直接お問い合わせになたらいかがでしょうか?私はその任にあらずです。
[31830]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月04日 11:28
投稿者:catgut(ID:OAJ1WQI)
jackさま、
コメントありがとうございます。

jackさまの3番目のヴィブラートは分析データとしては明らかに「基準音
を上限として下にかけた」ヴィブラートですが、本人の意識として最初
から「低め」に意識されていたとすれば、音程認識自体は「上下にかけ
る」と考えている人と同一ということになりますね。


再確認ですが、Hauckの本で引用される文献もほとんどが「声の揺れ
を真似たものがヴァイオリンのヴィブラートである」と指摘しています。
だからこそ「ヴィブラートを下にかける」という考え方はなかったのだと
思います。
レオポルド・モーツァルトも歌や自然に見られる音程の上下の揺れを
ヴァイオリンで真似たものがヴァイオリンのヴィブラートであると考えて
います。アマデウス・モーツァルトもほぼ確実に「基準音の上下に」
「上に向けて」ヴィブラートをかけていたことがレオポルドの本から
わかります。

Leopold Mozart「A Treatise on the Fundamental Principles of
Violin Playing」VI章より

Take pains to imitate this natural quivering on the violin, when the finger is pressed strongly down on the string, and one makes a small movement with the whole hand; which however must not move sideways but forwards toward the bridge and backwards toward the scroll; ofwhich some mention has already been made in Chapter V.
For as, when the remaining trembling sound of a struck string or bell is not pure and continues to sound not on one note only but sways first too high, then too low, just so by the movement of the hand forward and backward must you endeavour to imitate exactly the swaying of these intermediate tones.

この自然な振動(引用者注:歌や自然現象に見られる)をヴァイオリン
上で真似してください。それは手全体を少し動かすことによって行いま
す。横に動かしてはならず、駒側の前方に動かし、そしてスクロール
側の後方に動かします。いくつかの注意点はすでにV章に示していま
す。弦や鐘の音の響きは一定の音程ではなく高い音になったり低い
音になったりします。あなたは手を前方と後方に動かすことで、これら
の中間の音程の揺れを正確に真似するよう努力しなければなりません。
[31834]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月04日 14:53
投稿者:jack(ID:aDSJGWA)
[31830]
[31830]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月04日 11:28
投稿者:catgut(ID:OAJ1WQI)
jackさま、
コメントありがとうございます。

jackさまの3番目のヴィブラートは分析データとしては明らかに「基準音
を上限として下にかけた」ヴィブラートですが、本人の意識として最初
から「低め」に意識されていたとすれば、音程認識自体は「上下にかけ
る」と考えている人と同一ということになりますね。


再確認ですが、Hauckの本で引用される文献もほとんどが「声の揺れ
を真似たものがヴァイオリンのヴィブラートである」と指摘しています。
だからこそ「ヴィブラートを下にかける」という考え方はなかったのだと
思います。
レオポルド・モーツァルトも歌や自然に見られる音程の上下の揺れを
ヴァイオリンで真似たものがヴァイオリンのヴィブラートであると考えて
います。アマデウス・モーツァルトもほぼ確実に「基準音の上下に」
「上に向けて」ヴィブラートをかけていたことがレオポルドの本から
わかります。

Leopold Mozart「A Treatise on the Fundamental Principles of
Violin Playing」VI章より

Take pains to imitate this natural quivering on the violin, when the finger is pressed strongly down on the string, and one makes a small movement with the whole hand; which however must not move sideways but forwards toward the bridge and backwards toward the scroll; ofwhich some mention has already been made in Chapter V.
For as, when the remaining trembling sound of a struck string or bell is not pure and continues to sound not on one note only but sways first too high, then too low, just so by the movement of the hand forward and backward must you endeavour to imitate exactly the swaying of these intermediate tones.

この自然な振動(引用者注:歌や自然現象に見られる)をヴァイオリン
上で真似してください。それは手全体を少し動かすことによって行いま
す。横に動かしてはならず、駒側の前方に動かし、そしてスクロール
側の後方に動かします。いくつかの注意点はすでにV章に示していま
す。弦や鐘の音の響きは一定の音程ではなく高い音になったり低い
音になったりします。あなたは手を前方と後方に動かすことで、これら
の中間の音程の揺れを正確に真似するよう努力しなければなりません。
catgutさん
>音程認識自体は「上下にかける」と考えている人と同一ということになりますね。

そんなことは一切ありません。



>アマデウス・モーツァルトもほぼ確実に「基準音の上下に」
「上に向けて」ヴィブラートをかけていたことがレオポルドの本から
わかります。

レオポルド英訳本は座右の銘にしておりますが、そのようなことは私には一切読み取れません。

疲れました。おやすみなさい。
jack
[31835]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月04日 16:24
投稿者:catgut(ID:OAJ1WQI)
jackさま、

それでは第三者に判定して頂くしかありませんね。
ちなみに前段は以下の通りです。

THE Tremolo is an ornamentation which arises from Nature herself and which can be used charmingly on a long note, not only by good instrumentalists but also by clever singers. Nature herself is the instructress thereof. For if we strike a slack string or a bell sharply, we hear after the stroke a certain wave-like undulation
(ondeggiamento) of the struck note. And this trembling after-sound is called tremolo, also tremulant [or tremoleto].

トレモロ(引用者注:ここではヴィブラートの意味)は自然から発生した
装飾音で、魅力的に長い音に使われます。良い器楽奏者や賢明な歌手によって使われます。「自然」自身がそれを教えてくれます。たるんだ弦や鐘を強く叩くと、波打った音が聞えます。この震えている音をトレモロ(ヴィブラート)と呼びます。

・自然の音の揺れが「基準音の下」にしか揺れないということはありえない。
・以下の記述は明らかに「ヴィブラートを基準音の上下に」「上に向けて」かけると読める。
 「駒側の前方に動かし、そしてスクロール側の後方に動かす」
 「弦や鐘の音の響きは一定の音程ではなく高い音になったり低い音になる」
 「腕を前方と後方に動かす」
 「これらの中間の音程の揺れを正確に真似する」 
・ほぼ同じ時期に出版されたジェミニアーニの本でも「in→out」の順に書かれており、ジェミニアーニの推奨する楽器の持ち方では手前にしかかけられず、当時の奏者の大半がそのような持ち方をしていたと考えられる。
[31836]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月04日 19:55
投稿者:wtnabe(ID:GId0QEc)
jackさん、私が呼び出してしまったのかもしれず、お休みのところ誠に申し分けございませんでした。


さて、

catgutさんの発言[31564]
[31564]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年02月18日 18:58
投稿者:catgut(ID:lkIXCZA)
「ヴィブラートを基準音の下にかける」という説がイヴァン・ガラミアンに由来すると推定される理由を以下に示します。

前掲の論文での調査によると、「ヴィブラートを基準音の下にかける」という主張はガラミアンが最も早く、1948年に主張したとされています。
ttp://etd.lib.fsu.edu/theses/available/etd-05082006-134732/unrestricted/RBM_manuscript.pdf
Galamian, I. (1948). Vibrato. In Principles of Violin Playing and Teaching (pp. 37-43).Englewood Cliffs, N.J.: Prentice-Hall.

"Principles of Violin Playing and Teaching"は一般には1962年に刊行されたようですが、記録(実際はガラミアンからの聞き書き)は1948年から開始されたそうです。このため上記論文の著者は1948年としたのではないかと思われます。

ttp://www.mcla.edu/Academics/Majors__Departments/EnglishCommunications/langston/re/r-gal.html
>began in 1948 to record the techniques

このためガラミアン門下の人以外が「ヴィブラートを下にかける」という考え方を知ったのは1962年以降である可能性が高いと思われます。

ガラミアンの著書"Principles of Violin Playing and Teaching"では、「人間の耳はヴィブラート範囲の上端の音程が聞えるので、基準音から下にかける」と書かれています。ところが、実際にはすでに1930年代にSeashoreやSmallが「ヴィブラート範囲の中間が音程として知覚される」という論文を発表しています。ヴァイオリン教育者であるRollandもこの研究を引用してヴィブラートの音程がヴィブラート範囲の中間にあることを認めています。
反対に「ヴィブラート範囲の上端の音程が聞える」とする調査結果はその逆の結果も出している1967年のFletcherの研究を除くと1件も存在しません。

つまりガラミアンは「人間の耳はヴィブラート範囲の上端が聞える」という特徴的な誤りをした上で、その結果として「ヴィブラートを基準音の下にかける」と主張しているわけです。

現在「ヴィブラートを下にかける」という説明を見ると、必ずといっていいほど「人間の耳はヴィブラート範囲の上端が聞える」という説明が入っています。これでほぼガラミアンの説を引用したものだと推定できます。

今後の調査でガラミアンが「ヴィブラートを下にかける」と考えるに至ったガラミアンに先立つ資料が出てくる可能性は十分あると思いますが、「ヴィブラートを下にかける」という説が普及した直接の原因はガラミアンの著書であると考えてまず間違いないと思います。

このためガラミアン門下の人以外が「ヴィブラートを下にかける」という考え方を知ったのは1962年以降である可能性が高いと思われます。

から「ヴィブラートを下にかける」という考え方が広まって45年と推定します。

catgutさんが害があると主張するのは、catgutさんの発言[31823]
[31823]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月03日 23:43
投稿者:catgut(ID:OAJ1WQI)
wtnabeさま、

jackさま作成mp3の3番目のヴィブラートが「慎重に行って本当に基準音の下にかかる」ヴィブラートになっていることはtartiniでもアマチュアチェロ弾きさまの分析ソフトでも確認済みです。1番目のヴィブラートについては、jackさま自身がおっしゃる通り、オーバーシュートしているわけです。3番目のヴィブラートは今回の例として問題ないと思います。

私は以下の理由により「本当は基準音の上下にヴィブラートがかかる」
という説明なしで「基準音の下にかける」という指導は有害だと考えます。

・ヴィブラートを下にかけるために、常に指先で弦を押えなければならないと考えてしまう(実際にそのような方がいました)
・指導を忠実に守って基準音の下だけに本当にかける人が出る可能性がある

また、このような指導が有益であるなら、あご当ての発明(1810年代)
以降150年間もこのような指導が存在しなかった理由が説明できません。

・ヴィブラートを下にかけるために、常に指先で弦を押えなければならないと考えてしまう(実際にそのような方がいました)
・指導を忠実に守って基準音の下だけに本当にかける人が出る可能性がある

から推定して45年間で1名です。それもレッスンですぐ直るでしょう。

「ヴィブラートを下にかける」から受ける利益は、永峰氏の記事から1回でレッスンに参加した音大生全員です。

これは、通常に考えればメリットの方がはるかに大きいと結論するのが普通でしょう。
[31840]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月04日 20:52
投稿者:catgut(ID:OAJ1WQI)
現在ヴィブラートを「下に向けて」かけて優れた演奏をされている方々を
否定するつもりはありません。しかし「必ず基準音の下にかけなければな
らない」「必ず下に向けてかけなければならない」という主張は以下の理
由から明確な誤りです。

・ヴィブラートの起源から
 ヴィブラートの起源については自然の音の揺れや声の震えを真似した
ものであると見解が一致しています。自然の音の揺れや声の震えは
基準音から下にだけかかることは通常ありえません。

・人間の音程認識の観点から
 人間の耳はヴィブラート範囲のおよそ中間の音程を認識します。この
ため正しい音程で聞えるようにするためにはヴィブラートを基準音の
上下にかける必要があります。

・ヴィブラートの歴史から
 バロックヴァイオリンの時代までは主にヴァイオリンをあごで挟まず、
左手で保持していたため「腕のヴィブラート」は使用できませんでした。
このため「手首のヴィブラ-ト」を使いますが、楽器を保持しながらで
あるため下に向けてかけるのは非常に困難です。よってバロックヴァ
イオリンの時代までは主に「上に向けて」かけていたと考えられます。
レオポルド・モーツァルト(彼は楽器をエラで挟む持ち方を推奨してい
ましたが)のヴァイオリン奏法の本にも基準音の上下に・上に向けて
 かけるとする記述があり ます。

 また有名なカール・フレッシュの「ヴァイオリン演奏の技法」などを含
 めて、多数の文献で「基準音の上下にかける」「上に向けてかける」と
 書かれています。

 ヴィブラートに関する文献を調査しても「基準音の下にかける」「下に向
 けてかける」と主張したのはイヴァン・ガラミアンのみであり、他に(ガラ
 ミアンの主張と独立に)「基準音の下にかける」「下に向けてかける」と
 主張した文献は現時点までには見つかっていません。

・実際の演奏者の意識から
 現在国内でも音大生などに「基準音の下にかける」と考えていない方
 が多数いらっしゃることが明らかになりました。
[31842]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月04日 22:40
投稿者:catgut(ID:IkMIZ0g)
みどりさま、
「見苦しい」というのは、これだけ「ヴィブラートを基準音の下にかける」
という説が誤りであることがはっきりしているにもかかわらず、それに
こだわる方々に対する言葉と考えてよろしいでしょうか。

みどりさまご自身はどのような見解なのですか?
[31845]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月04日 23:38
投稿者:catgut(ID:IkMIZ0g)
みどりさま、

私自身、実際に楽器からあご当てを外し、バロック時代の楽器の持ち方
でどのようにヴィブラートをかけられるか、関連資料を見ながら何度も試してみました。さすがに楽器はモダンですが。その結果、C.M. Sunday(バ
ロック奏法を研究している方です)が以下で書かれている通りであると
確認できました。これが「都合の良い資料」に見えるのでしょうか?

ttp://cnx.org/content/m13351/latest/
The modern arm vibrato was unknown in the eighteenth century,
and would have been impossible to produce, given the absence of
a modern chin-rest. Vibrato was produced with the left wrist,
more enabling one to control the speed: fast, slow, or accelerating
on one note. The hand undulated toward the bridge, rather than
the scroll, and the left hand held the instrument differently than
it is held today
あご当てがなかったので18世紀には「腕のヴィブラート」は使われなか
ったでしょう。ヴィブラートは左手首でスピードをコントロールしてかけ
ます。手はスクロール側というよりブリッジ側に揺らします。左手は現代
とは違う形で楽器を支えます。

もしあごで楽器を挟まない持ち方でスクロール側にヴィブラートをかけられるのであれば、ぜひ方法を教えて頂けると幸いです。
[31846]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月05日 00:09
投稿者:pochi(ID:SBdYcmA)
>もしあごで楽器を挟まない持ち方でスクロール側にヴィブラートをかけられるのであれば、ぜひ方法を教えて頂けると幸いです。

***指で掛ければ出来ます。
[31847]

Re: ヴィブラートのかけ方について その2

投稿日時:2007年03月05日 00:51
投稿者:catgut(ID:IkMIZ0g)
pochiさま、

ご指摘の通りですが、少し補足させてください。

楽器をあごで挟まない持ち方の場合、
・単音にゆっくりヴィブラートをかけるだけなら「手首のヴィブラート」でも
下に向けてかけることはできます。しかし左手で楽器を保持しながら
(当時はスクロール側をかなり下げて持っていました)演奏中に「下に
向けてかける」と楽器がずり落ちてしまいます。もしくは指を柔軟に動
かせないくらいしっかり楽器を握らなければならなくなります。つまり
 演奏できなくなるのです。上に向 けてかければ手前に向かう力を
 胸で受け止める形になるのでずっと簡単です。
・バロック時代のヴィブラートは長い音に装飾音的に限定的にかけるも
 のであり、ある程度の幅が必要とされたと考えられます。

これらのことから、Sundayの「手首のヴィブラートで手前にかけた」という
説は私は正しいと思います。バロックヴァイオリンの演奏に詳しい方が
いらっしゃったらご教示いただければ幸いです。
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