[33829]
ヴァイオリンの音の仕組みについて
投稿日時:2007年06月10日 00:56
投稿者:catgut(ID:KVYiWHM)
ヴァイオリンの音について、イメージ的にはなんとなく理解できるけれど、
よく分からないものがあります。それらについて仕組みを強引に考察してみました。補足や疑問がありましたらコメントをお願いします。
・こもった音
一般に「こもった音」とは高周波成分が少ない音です。ステレオのイコライザーなどで高音を出なくすると「こもった音」になります。
ヴァイオリンで「こもった音」にする簡単な方法は魂柱をきつく立てることです。こうすると表板が振動しにくくなり、高音が出ずに「こもった音」になります。通販品や安価な楽器は魂柱が倒れないようにきつく立ててあるため、「こもった音」になりがちです。表板が厚いプレス製造の楽器などでも同様の傾向があります。
・新作の音とモダン・オールドの音の違い
新作の多くは「硬い音」と言われ、モダン・オールド楽器の多くは「柔らかい音」と言われます。一般に「硬い音」とは高周波成分が多い音です。経年変化により木の性質が変わります。
実測結果によると、確かに新作では高周波成分が多く、オールド楽器では一定レベル以上の高周波成分は急激に減少する傾向があるそうです。オールド楽器のフォルマントは人間の声によく似ているそうです(もともと人間の声に似た楽器が尊重されて残ったのかもしれませんが)。
仕組みは私にはよく分かりませんが、新しい表板は高周波振動をしやすく、古い表板はよりまったりと振動するようです。
・枯れた音、鼻声、シルバートーン
モダン・オールド楽器の音を形容するのに「枯れた音」「鼻声」「シルバートーン」といった言葉がよく使われます。「枯れた音」とは木の経年変化によりレスポンスが早く、粒立ちの良いはっきりした音の意味で使われることが多いようです。「鼻声」は説明不要と思いますが、結果的により人間くさい音になるとも考えられます。特定の周波数の出方が強いか、「うなり」のような特殊な振動があるのかもしれません。「シルバートーン」はもっとも良く分かりませんが、やはり「うなり」のような振動に関係するような気がします。
新作楽器でも、使用する木材を選んだり削り方などの工夫でモダン・オールド楽器にある程度近い音が出せるようです。
よく分からないものがあります。それらについて仕組みを強引に考察してみました。補足や疑問がありましたらコメントをお願いします。
・こもった音
一般に「こもった音」とは高周波成分が少ない音です。ステレオのイコライザーなどで高音を出なくすると「こもった音」になります。
ヴァイオリンで「こもった音」にする簡単な方法は魂柱をきつく立てることです。こうすると表板が振動しにくくなり、高音が出ずに「こもった音」になります。通販品や安価な楽器は魂柱が倒れないようにきつく立ててあるため、「こもった音」になりがちです。表板が厚いプレス製造の楽器などでも同様の傾向があります。
・新作の音とモダン・オールドの音の違い
新作の多くは「硬い音」と言われ、モダン・オールド楽器の多くは「柔らかい音」と言われます。一般に「硬い音」とは高周波成分が多い音です。経年変化により木の性質が変わります。
実測結果によると、確かに新作では高周波成分が多く、オールド楽器では一定レベル以上の高周波成分は急激に減少する傾向があるそうです。オールド楽器のフォルマントは人間の声によく似ているそうです(もともと人間の声に似た楽器が尊重されて残ったのかもしれませんが)。
仕組みは私にはよく分かりませんが、新しい表板は高周波振動をしやすく、古い表板はよりまったりと振動するようです。
・枯れた音、鼻声、シルバートーン
モダン・オールド楽器の音を形容するのに「枯れた音」「鼻声」「シルバートーン」といった言葉がよく使われます。「枯れた音」とは木の経年変化によりレスポンスが早く、粒立ちの良いはっきりした音の意味で使われることが多いようです。「鼻声」は説明不要と思いますが、結果的により人間くさい音になるとも考えられます。特定の周波数の出方が強いか、「うなり」のような特殊な振動があるのかもしれません。「シルバートーン」はもっとも良く分かりませんが、やはり「うなり」のような振動に関係するような気がします。
新作楽器でも、使用する木材を選んだり削り方などの工夫でモダン・オールド楽器にある程度近い音が出せるようです。
ヴァイオリン掲示板に戻る
1 / 13 ページ [ 120コメント ]
[33830]
Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて
投稿日時:2007年06月10日 00:59
投稿者:catgut(ID:KVYiWHM)
つづきです。
・遠達性のある音
音のエネルギーは距離の自乗に反比例して減少しますから、奏者から30メートル離れると音のエネルギーは1メートルで聞いた場合のわずか900分の1になります。実際はホールの反響があるのでそれほど単純ではありませんが、「遠達性」は音のエネルギーとはあまり関係しないと思われます。むしろ「音色」が重要で、人間の耳(心理)が聞き取りやすい音色を出す楽器が「遠達性がある」と言われているのではないかと思います。単なる想像ですが、ソプラノの声に似た音は人間の耳は遠くからでも聞き取りやす
いのではないでしょうか。
なお、間隔が正確なヴィブラートをかけられる上級者はヴィブラートの位相が重なってホールでは大きな音に聞こえると言われています。
・胴鳴り、傍鳴り、箱鳴り
これらは遠達性とは逆に、奏者のそばでしか聞こえない音のことを指すようです。私は楽器の胴内での共鳴音のことだと思います。f孔にピンマイクを付けて録音すれば実際に録音可能です。しかし数メートル以上マイクを離して録音すると録音できません。
ただ、胴鳴り、傍鳴り、箱鳴りが聴衆にとって無意味かというとそうでもなく、これがあるとないとでは音程の取りやすさや(響きが分かりやすい)、最終的な楽器の響きに関係があるように思われます。
・上級者でないと弾きこなせない楽器
銘器に関連して「上級者でないと弾きこなせない楽器」という話が出てきます。また「弾きこなすのに何ヶ月もかかった」という話もあります。これはどういうことでしょうか。
本質的に鳴らない楽器のセールストークでなければ、最も可能性が高いと思われるのは、弦の振動の仕方(ヘルムホルツ振動?)が普通の楽器と違う可能性です。仕組みはよく分かりませんが、普通より松脂を多く付けたり圧力を微妙にかけて弓毛と弦との摩擦力を増し、弦を大きく振動させることで、はじめて音が大きく、美しく鳴るような楽器がある可能性はあると
思います。この場合、奏者はボーイングをある程度変更しなければならないので、上級者でなければ美しく弾けなかったり、弾きこなすには時間がかかることになるでしょう。
もしこのような楽器が存在し、ソリストが使いこなせば大変効果的ということになります。
・遠達性のある音
音のエネルギーは距離の自乗に反比例して減少しますから、奏者から30メートル離れると音のエネルギーは1メートルで聞いた場合のわずか900分の1になります。実際はホールの反響があるのでそれほど単純ではありませんが、「遠達性」は音のエネルギーとはあまり関係しないと思われます。むしろ「音色」が重要で、人間の耳(心理)が聞き取りやすい音色を出す楽器が「遠達性がある」と言われているのではないかと思います。単なる想像ですが、ソプラノの声に似た音は人間の耳は遠くからでも聞き取りやす
いのではないでしょうか。
なお、間隔が正確なヴィブラートをかけられる上級者はヴィブラートの位相が重なってホールでは大きな音に聞こえると言われています。
・胴鳴り、傍鳴り、箱鳴り
これらは遠達性とは逆に、奏者のそばでしか聞こえない音のことを指すようです。私は楽器の胴内での共鳴音のことだと思います。f孔にピンマイクを付けて録音すれば実際に録音可能です。しかし数メートル以上マイクを離して録音すると録音できません。
ただ、胴鳴り、傍鳴り、箱鳴りが聴衆にとって無意味かというとそうでもなく、これがあるとないとでは音程の取りやすさや(響きが分かりやすい)、最終的な楽器の響きに関係があるように思われます。
・上級者でないと弾きこなせない楽器
銘器に関連して「上級者でないと弾きこなせない楽器」という話が出てきます。また「弾きこなすのに何ヶ月もかかった」という話もあります。これはどういうことでしょうか。
本質的に鳴らない楽器のセールストークでなければ、最も可能性が高いと思われるのは、弦の振動の仕方(ヘルムホルツ振動?)が普通の楽器と違う可能性です。仕組みはよく分かりませんが、普通より松脂を多く付けたり圧力を微妙にかけて弓毛と弦との摩擦力を増し、弦を大きく振動させることで、はじめて音が大きく、美しく鳴るような楽器がある可能性はあると
思います。この場合、奏者はボーイングをある程度変更しなければならないので、上級者でなければ美しく弾けなかったり、弾きこなすには時間がかかることになるでしょう。
もしこのような楽器が存在し、ソリストが使いこなせば大変効果的ということになります。
[33835]
Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて
投稿日時:2007年06月10日 16:16
投稿者:catgut(ID:KVYiWHM)
・上級者でないと弾きこなせない楽器
について、
「楽器の物理学 N,H. フレッチャー (著), T.D. ロッシング (著)」という本によると、Carleen Hutchinsらがヴァイオリンを胴体の振動特性の違いに着目して、ダブルオクターブ法という手法で「学生用」「室内楽用」「ソリスト用」などに分類しているそうです。「柔らかいボーイング」でそこそこ鳴る楽器と、「強いボーイング」で良く鳴る楽器があるということのようです。
について、
「楽器の物理学 N,H. フレッチャー (著), T.D. ロッシング (著)」という本によると、Carleen Hutchinsらがヴァイオリンを胴体の振動特性の違いに着目して、ダブルオクターブ法という手法で「学生用」「室内楽用」「ソリスト用」などに分類しているそうです。「柔らかいボーイング」でそこそこ鳴る楽器と、「強いボーイング」で良く鳴る楽器があるということのようです。
[33836]
Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて
投稿日時:2007年06月10日 19:38
投稿者:父娘でVn始めました(ID:KTlTkzU)
この掲示板で、以前、ビッソロッティが鳴らしづらいというお話がありましたね。
[33842]
Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて
投稿日時:2007年06月11日 23:06
投稿者:catgut(ID:KVYiWHM)
tartiniの新バージョン(1.1)を使ってみるついでに、いくつか手持ちの楽器のE線開放弦を音色の比較のために録音してみました。
ピンマイクを使ってf孔の直近で録音したところ、はっきりと音色の違いが
比較できました。スペクトラムアナライザでピーク波形も見てみました。
・薄っぺらい音の楽器
相対的に基音(E)の音量が小さい。高周波成分が多く基音の倍音以外でも山が多い
・鋭い音、硬めの音の楽器
高周波成分が多い
・深みのある柔らかい音の楽器
相対的に基音(E)の音量が大きい。あるレベル以上の高周波成分が少なく、基音の倍音以外にはあまり山がない。
ピンマイクを使ってf孔の直近で録音したところ、はっきりと音色の違いが
比較できました。スペクトラムアナライザでピーク波形も見てみました。
・薄っぺらい音の楽器
相対的に基音(E)の音量が小さい。高周波成分が多く基音の倍音以外でも山が多い
・鋭い音、硬めの音の楽器
高周波成分が多い
・深みのある柔らかい音の楽器
相対的に基音(E)の音量が大きい。あるレベル以上の高周波成分が少なく、基音の倍音以外にはあまり山がない。
[33843]
Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて
投稿日時:2007年06月11日 23:15
投稿者:catgut(ID:KVYiWHM)
父娘でVn始めましたさま、
「弾き込み」という現象を現時点でもっとも合理的に説明できるのは
楽器ごとの振動特性の違いだと思います。
楽器の物理的変化による音の変化としては、
(1)振動による状態変化(数分・数時間単位の変化)
魂柱・駒などの接触面が振動により摩擦熱を持ち状態が変化する?
(2)オイルニス(リンシードオイル)の固化(数ヶ月単位の変化)
(3)木の乾燥・セルロース化(数ヶ月から数十年単位の変化)
などが考えられます。
もちろんこれらもあるとは思いますが、多くのケースでは奏者が
「楽器に慣れる」のに時間がかかることが「弾き込み」という表現
になるのではないかと思います。
「弾き込み」という現象を現時点でもっとも合理的に説明できるのは
楽器ごとの振動特性の違いだと思います。
楽器の物理的変化による音の変化としては、
(1)振動による状態変化(数分・数時間単位の変化)
魂柱・駒などの接触面が振動により摩擦熱を持ち状態が変化する?
(2)オイルニス(リンシードオイル)の固化(数ヶ月単位の変化)
(3)木の乾燥・セルロース化(数ヶ月から数十年単位の変化)
などが考えられます。
もちろんこれらもあるとは思いますが、多くのケースでは奏者が
「楽器に慣れる」のに時間がかかることが「弾き込み」という表現
になるのではないかと思います。
[33865]
Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて
投稿日時:2007年06月16日 12:17
投稿者:catgut(ID:ghCVQ0A)
同じ楽器にスチールE線とガットE線(コルダ)を張ってスペクトルを比較してみました。ガットE線は基音と2倍音,4倍音がスチールE線より大きく、それ以上の高周波ではスチールE線より小さくなります。ガットE線がスチールE線より「人の声に似ている」ということでしょう。人間の女性の声は4kHz-5kHz程度以上では急激に倍音成分が減少します。
結局、楽器自体で高周波成分の少ないオールド楽器に、ガットE線を張ると、相乗効果でより「人間の声に似た音色」になると思われます。
「良い音色」の楽器は、
・基音が太く出る
・4kHz-5kHz以上の高周波成分は出すぎないほうが良い
ということでしょうか。
結局、楽器自体で高周波成分の少ないオールド楽器に、ガットE線を張ると、相乗効果でより「人間の声に似た音色」になると思われます。
「良い音色」の楽器は、
・基音が太く出る
・4kHz-5kHz以上の高周波成分は出すぎないほうが良い
ということでしょうか。
[33868]
Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて
投稿日時:2007年06月16日 22:18
投稿者:catgut(ID:ghCVQ0A)
E線が少しうるさい楽器があったので、セオリー通りに魂柱を駒からテールピース側に3ミリほど離してみました。すると調整の前後で、基音と倍音の音量は変化しないのに、3倍音以上の倍音はすべて目だって減少しました。耳で聞いても明らかにまろやかな音になりました。
いかに駒・魂柱の調整が音色に大きな影響を与えるか再確認できました。
いかに駒・魂柱の調整が音色に大きな影響を与えるか再確認できました。
[33869]
Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて
投稿日時:2007年06月16日 23:17
投稿者:JAMES(ID:GIFYZYk)
catgut様
以下の投稿、読んでみました。大変参考になりました。
ぶしつけながら一つ質問したいと思います。わたしは最近までKUNの肩当を使っていましたが、ボンムジカの肩当に交換しました。
そうすると明らかに音が丸くなり、主に和音の粒がそろうようになりました。肩当って、音に影響があるのですか?
それともわたしの勘違いなのでしょうか?
肩当がなくても弾けるのが理想であると以前レッスンしてもらっていた先生に教わりましたが肩当ってどういう役割を果たしていると思われますか?ご意見お聞きできれば嬉しく思います。
以下の投稿、読んでみました。大変参考になりました。
ぶしつけながら一つ質問したいと思います。わたしは最近までKUNの肩当を使っていましたが、ボンムジカの肩当に交換しました。
そうすると明らかに音が丸くなり、主に和音の粒がそろうようになりました。肩当って、音に影響があるのですか?
それともわたしの勘違いなのでしょうか?
肩当がなくても弾けるのが理想であると以前レッスンしてもらっていた先生に教わりましたが肩当ってどういう役割を果たしていると思われますか?ご意見お聞きできれば嬉しく思います。
[33870]
Re: ヴァイオリンの音の仕組みについて
投稿日時:2007年06月17日 02:08
投稿者:catgut(ID:ghCVQ0A)
JAMESさま、
私もボンムジカとKUN型の肩当の両方を使っています。
残念ながら私は両者で音の違いを意識したことはありませんが、以下のような可能性が考えられるのではないでしょうか。
・耳の位置の違い
・肩当の材質、形状による体への振動の伝わり方の違い
・肩当の体への密着度の違いによる楽器の振動への影響
・肩当の止め具による裏板の振動への影響
ヴァイオリンは本来空中に浮かべて弾けば一番よく振動するのでしょうが、
あごと肩で挟んで固定しているわけですから、表板の振動に影響しないように工夫しているとはいえ、楽器全体の振動に何らかの影響を与えるでしょう。
肩当ありと肩当なしでどちらが物理的によく楽器が振動するかはケースバイケースではないかと思います。肩当なしで単にあごで肩に楽器を押し付けてしまったら振動を抑制するでしょうが、肩当を使わない人は極力楽器を挟まないように工夫すると思うので、その場合は肩当を使う場合より楽器は振動するのではないでしょうか。
私もボンムジカとKUN型の肩当の両方を使っています。
残念ながら私は両者で音の違いを意識したことはありませんが、以下のような可能性が考えられるのではないでしょうか。
・耳の位置の違い
・肩当の材質、形状による体への振動の伝わり方の違い
・肩当の体への密着度の違いによる楽器の振動への影響
・肩当の止め具による裏板の振動への影響
ヴァイオリンは本来空中に浮かべて弾けば一番よく振動するのでしょうが、
あごと肩で挟んで固定しているわけですから、表板の振動に影響しないように工夫しているとはいえ、楽器全体の振動に何らかの影響を与えるでしょう。
肩当ありと肩当なしでどちらが物理的によく楽器が振動するかはケースバイケースではないかと思います。肩当なしで単にあごで肩に楽器を押し付けてしまったら振動を抑制するでしょうが、肩当を使わない人は極力楽器を挟まないように工夫すると思うので、その場合は肩当を使う場合より楽器は振動するのではないでしょうか。
ヴァイオリン掲示板に戻る
1 / 13 ページ [ 120コメント ]