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弦を指板に接触させないで弾く奏法 | ヴァイオリン掲示板

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弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月07日 01:57
投稿者:スガラボット(ID:UFGWUJA)
別スレッド「重音3度のイントネーション」で3度の重音を演奏するときの奏法として「指を指板まで押さえない」ように左手指が弦を押さえる力を緩めて弾いてみてはどうでしょう、とコメントさせていただきました。

この発言に対して早速この掲示板で実力者としての誉れ高いpochiさんから「この奏法には疑問を持っている」との発言を頂きました。また、catgutさんからは2002年5月号のストリング誌のインタビュー記事にヴァイオリニスト朝枝信彦氏の「私は指板に弦を付けない」奏法が紹介されていることをお知らせいただきました。catgutさんありがとうございます。私はたまたまこの記事を読んではおりませんでしたが、今回のご紹介を受けて早速バックナンバーを取り寄せて確認させていただきました。朝枝氏の言葉に合わせてこのスレッドのタイトルを「指を…」ではなく「弦を…」に替えさせていただきましたが、これから何度かに渡ってこの「弦を指板に接触させないで弾く」奏法について議論を展開させていただきたいと思います。

まず何はともあれ、この「弦を指板に接触させない」、「指板に弦を付けない」或いは同じことですが「左指で弦を指板まで押さえない」で弾くとどんな音がするのか、以下に述べる方法で皆さんに試していただきたいと思います。

1. 例として、Vn或いはVaでD線の1stポジションで3の指を押さえ、G音をヴィブラートをかけて、フォルテのなるべくたっぷりした良く響く音が出るように弾いてみてください。
2. 次に左指は同じ3の指で、G線のC音と先程弾いたD線のG音を5度の重音を弾く時のように、G線とD線の間の隙間に指を置いて、実際に弾くのは5度の重音ではなく、先程と同じD線のG音だけを短音で、同じようにヴィブラートをかけてたっぷりしたフォルテで弾いてください。 左手の薬指はG線とD線の隙間に置きますが、実際に弾くのはD線だけなのでG線を押さえる意識は持たなくても結構です。この時、指が弦と弦の隙間にある分だけ、先程D線だけを単独で押さえて弾いたときよりD線に接触する部分が指の腹側よりになっていることと思います。この時もD線と接触する指の部分が少し指の腹側になっただけですから、1.の時と同じしっかりしたG音が鳴ったことと思います。
3. 2.の状態から、左指を少しG線側に起こしていくと、指がG線とD線との隙間にだんだん立っていくことにより、指の腹がD線を押さえる力が少しずつ弱くなっていき、遂には薬指の腹だけD線に接触しているものの、D線自体は指板から離れた状態になるポイントがあります。この時も右手のボウイングはフォルテでたっぷりした音を弾いていた状態のままにしてください。ほら左手指に弦の振動を直接感じることが出来ますね?

どうでしょうか。同じように左手の薬指は弦と弦の間を押さえていて、2.は普通にD線を指板に付けた奏法の音、3.はD線が指の腹の部分のみに接触していて指板には接触していない奏法の音となります。 たっぷりしたテヌートの四分音符で4拍づつ、2.と3.の奏法で交互に弾き比べてみてください。 この時2.と3.では楽器から出る音の響きに差があることが実感できたのではないかと思います。

3.の音は明らかに2.の音とはその倍音成分が異なっています。楽器やボウイングがしっかりしていると、3.の音も決してヘナヘナ音やひっくり返った音ではなく、倍音成分がたっぷりした朗々とした音が出ていることがお分かりになりますね。 この3.の音は2.のキチッと弦を指板まで押さえた音に比べて、太く柔らかく遠くまで浸透する音、そして他の楽器の音とより響和し合う(ハモりやすい)音なのです。

楽器の能力や調整が十分でなかったり、右手のボウイングがしっかりしていないと、3.の「弦を指板に接し良くさせない」状態の音が貧弱になってしまうことがあるかも知れません。しかし既にある程度の水準の演奏をされる人なら、弦と弦の間を押さえるという手段をとることによって、しっかり左手指は指板の位置を確保しながら、弦のみは指板と接触させることなく、たっぷりしたフォルテを弾くことが可能なのです。そしてこの弾き方ではより自然で豊かなヴィブラートをかけることが出来ます。 左手指を指板まで押さえることなく中空で踊っているような弾き方だけが「弦を指板に接触させないで弾く」唯一の奏法ではありません。勿論この様に中空で弾くことが音楽的により適している場合もありますが。(以下次回に続く)
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Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月14日 16:45
投稿者:チャングム・けんじ(ID:JAMDEVk)
pochiさん、クロアシさんのベテランの方々の実際にトライしたコメントを拝見して この奏法はどうも演奏テクニックによるというより バイオリンの調整の良し悪し(特にサウンドポスト) によるところが大きいような気がします。そしてこの調整が出来る日本人は極限られているのじゃないでしょうか。例えば 本掲示板でも少し話題となった 海外のソリストも来日した際に依頼する”幻の職人さん”。 ちょっとミステリアス過ぎますかね。


BTW
もし可能であれば 下記わたしのコメント ([35463]
[35463]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月11日 22:56
投稿者:チャングム・けんじ(ID:JAMDEVk)
ひとりごとです。

どこかの掲示板に“あるソリストの左手の指先は柔らかかった” とのコメントがたしかあったと思います。指板まで弦を強く押さえつけているわたしの指先は固くなっているのに どうしてそうなのか疑問でした。 なるほどそうだったのかと勝手に思ってます。

ロシアにバイオリン留学したある人が弦を押さえつけないで弾く奏法(この表現が適当かどうかは?ですが)へフォーム改造されたということを人伝に聞きました。そして“ロシアの学生はありふれたバイオリンでもすばらしく美しい音を出す”というコメントもどこかで読んだ記憶があります。 なるほどそうだったのかと勝手に思ってます。


Ultimate Late-Starter/チャングム・けんじ
“ロシアにバイオリン留学・・・”)に関して ロシアに留学経験のある方 又は ロシアの先生にレッスンを受けた方の生のコメントをお願いします。


Ultimate Late-Starter/チャングム・けんじ
[35507]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月15日 16:27
投稿者:スガラボット(ID:l1cQQwA)
<catgut>さん、
僕の楽器は一応クレモナ製ですが、朝枝氏と違って肩当てはしています。タオルの上など(空中に置いて)弾くのは無理だけど、「弦を指板まで強く押さえた」音と、「弦を指板に付けない」音の違いを一度計測してみることにします。この時、多分弾く音もG線3の指のC音みたいに他の弦の共鳴が強い音と、C線3の指のF音とか、G線2の指のH音など共鳴があまりない音と比較してみるのが良さそうですね。

<pochi>さん、
「元々最小限の力で押えている心算」で「半世紀に渡って、指盤を叩く練習をしてきた人」に、「弦が指板まで達しないように」など釈迦に説法だったとしたらお許し下さい。 特に速いパッセージを弾くとき、左指で弦を叩くようにして明確に音型を浮き立たせることは基本テクニックですが、この時は弦が指板まで達する前に次の音に移行してしまうでしょうから、こんな戯言は言うまでもありませんね。 ゆったりした音を弾くときに、どんな押さえ方をして、どんな音色を狙うかは、これも演奏者の個性に属すること。ただこういう事に無知な人もいる訳ですから、啓蒙活動は必要です。「朝枝信彦君は何を今更…」などと言わず、全てをしろしめす心境で見ていただければと思います。

<チャングム・けんじ>さん、
> バイオリンの調整の良し悪し … そしてこの調整が出来る日本人は極限られているのじゃないでしょうか。

そんな大げさな話じゃないと思いますけど。左手指で弦を押さえる強さの段階にはいくつかあります。まず第1段階は軽く触れるだけのフラジオレット。これは基本振動数を決める弦長は、開放弦か或いはアーティフィシャル・フラジオではしっかり押さえた指から駒までの長さで、軽く触れた指は目的の倍音が出るように弦振動の節を決めるだけの役割です。第2段階として、もう少し弦を押す指の力を増すと、今度は弦の基本振動数を決める弦長がハッキリしない押さえ方になって、音がひっくり返るか或いはまともな発音が出来ない状態。次が、もう少し指の力を強くした第3段階で、僕が提唱する「弦を指板に付けないで」弾いて、しっかり目的の音が出る状態。そして第4段階が「弦を指板にしっかり付けて弾く」状態になります。

楽器の調整によって、弦の張りが弱かったり指板からの弦高が低かったりすると、この第3段階の状態が現れないまま第2段階から第4段階に飛んでしまうことが考えられます。こういう楽器で僕の主張をそのまま実行しようとしたら音が出ないだけで終わってしまうでしょう。それでも何とか第3段階に近い状況を創り出そうとする工夫が「指先のみ指板に付け、弦はそのしっかり確保された指先から皮一枚の距離で浮かせて弾く」技術になります。しかしこの奏法でヴィブラートをかけるとき、多分この状況は「指の腹で弦を柔らかく押さえて、弦の振動を指で感じながら弾く」というバイオリン奏法とが同じことなのかも知れません。それで、チェロやビオラより弦高が低く張りも弱いバイオリンではこの第3段階の奏法はこの様に表現されてきたのでしょうか。ただそれでも、朝枝氏が言われるように「弦と楽器の振動を指と身体全体で感じながら」、カトー・ハヴァシュの言う「響きに必要なたっぷりした空気感を大切に弾く」、と言う教えには耳を傾ける価値があるように思います。

あとロシア奏法については知識がありませんが、それ程の銘器ではないバイオリンからでも、とても柔らかい・魅力的な音を出す名人的な技術というのが確かに存在するような気はします。
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Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月15日 18:37
投稿者:チャングム・けんじ(ID:JAMDEVk)
“それ程の銘器ではないバイオリンからでも、とても柔らかい・魅力的な音を出す名人的な技術・・・” [35507]
[35507]

Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年11月15日 16:27
投稿者:スガラボット(ID:l1cQQwA)
<catgut>さん、
僕の楽器は一応クレモナ製ですが、朝枝氏と違って肩当てはしています。タオルの上など(空中に置いて)弾くのは無理だけど、「弦を指板まで強く押さえた」音と、「弦を指板に付けない」音の違いを一度計測してみることにします。この時、多分弾く音もG線3の指のC音みたいに他の弦の共鳴が強い音と、C線3の指のF音とか、G線2の指のH音など共鳴があまりない音と比較してみるのが良さそうですね。

<pochi>さん、
「元々最小限の力で押えている心算」で「半世紀に渡って、指盤を叩く練習をしてきた人」に、「弦が指板まで達しないように」など釈迦に説法だったとしたらお許し下さい。 特に速いパッセージを弾くとき、左指で弦を叩くようにして明確に音型を浮き立たせることは基本テクニックですが、この時は弦が指板まで達する前に次の音に移行してしまうでしょうから、こんな戯言は言うまでもありませんね。 ゆったりした音を弾くときに、どんな押さえ方をして、どんな音色を狙うかは、これも演奏者の個性に属すること。ただこういう事に無知な人もいる訳ですから、啓蒙活動は必要です。「朝枝信彦君は何を今更…」などと言わず、全てをしろしめす心境で見ていただければと思います。

<チャングム・けんじ>さん、
> バイオリンの調整の良し悪し … そしてこの調整が出来る日本人は極限られているのじゃないでしょうか。

そんな大げさな話じゃないと思いますけど。左手指で弦を押さえる強さの段階にはいくつかあります。まず第1段階は軽く触れるだけのフラジオレット。これは基本振動数を決める弦長は、開放弦か或いはアーティフィシャル・フラジオではしっかり押さえた指から駒までの長さで、軽く触れた指は目的の倍音が出るように弦振動の節を決めるだけの役割です。第2段階として、もう少し弦を押す指の力を増すと、今度は弦の基本振動数を決める弦長がハッキリしない押さえ方になって、音がひっくり返るか或いはまともな発音が出来ない状態。次が、もう少し指の力を強くした第3段階で、僕が提唱する「弦を指板に付けないで」弾いて、しっかり目的の音が出る状態。そして第4段階が「弦を指板にしっかり付けて弾く」状態になります。

楽器の調整によって、弦の張りが弱かったり指板からの弦高が低かったりすると、この第3段階の状態が現れないまま第2段階から第4段階に飛んでしまうことが考えられます。こういう楽器で僕の主張をそのまま実行しようとしたら音が出ないだけで終わってしまうでしょう。それでも何とか第3段階に近い状況を創り出そうとする工夫が「指先のみ指板に付け、弦はそのしっかり確保された指先から皮一枚の距離で浮かせて弾く」技術になります。しかしこの奏法でヴィブラートをかけるとき、多分この状況は「指の腹で弦を柔らかく押さえて、弦の振動を指で感じながら弾く」というバイオリン奏法とが同じことなのかも知れません。それで、チェロやビオラより弦高が低く張りも弱いバイオリンではこの第3段階の奏法はこの様に表現されてきたのでしょうか。ただそれでも、朝枝氏が言われるように「弦と楽器の振動を指と身体全体で感じながら」、カトー・ハヴァシュの言う「響きに必要なたっぷりした空気感を大切に弾く」、と言う教えには耳を傾ける価値があるように思います。

あとロシア奏法については知識がありませんが、それ程の銘器ではないバイオリンからでも、とても柔らかい・魅力的な音を出す名人的な技術というのが確かに存在するような気はします。

スガラボットさん

DVD“The Art of Violin: Devil's Instrument”のなかでパールマンがオイストラフのバイオリンについて 銘器じゃなくありふれた楽器 的なコメントをしてるのがたしかあったと思います。どうもロシアつながりがあるのかな? とか勝手に思ってます。

余談ですが パールマンはメニューインから受け継いだバイオリンを使ってるそうです。

Ultimate Late-Starter/チャングム・けんじ
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Re: 弦を指板に接触させないで弾く奏法

投稿日時:2007年12月04日 03:22
投稿者:catgut(ID:QWJUOZg)
私は肩当は重いボンムジカを主に使っていますが、意外にも音への影響
はKUN系に比れば少ないように思われます。理由を考えると、ボン
ムジカは足が長く、鉄板がバネのように介在しているため、それ
ほど楽器の振動を止めないのかもしれません。肩当の足を工夫して
楽器の振動を極力止めない仕組みを発明すれば大ヒットするかもし
れません。古い楽器には軽いフィッティングが良いと言われるのも
軽いほうが振動しやすいからでしょう。

あくまで1つの想像ですが、古い楽器や熱処理された楽器の音が良い
ことは、単純に軽いことが重要なポイントかもしれません。ただ、新作
楽器で軽く(薄く)しても剛性が足りなくなるため、異常振動などの弊害
のほうが大きくなると思います。新作でもオールドに近い音を出せ
る楽器があるようですが、このような楽器は形状の工夫で剛性を保ちな
がら軽くしているのではないでしょうか。
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