[35445]
弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月10日 16:57
投稿者:スガラボット(ID:QkhEczA)
別スレッドの「重音3度のイントネーション」に関連する話題なのでそちらで発言すべきとも思いましたが、スレ主のcocoさんの元の質問から話題が乖離しすぎるのでこちらで議論させて頂くことにします。
元のスレッドの議論ではバイオリンや弦楽四重奏で重音または和音を弾くとき、へマン著の「弦楽器のイントネーション」の弦楽四重奏の例を引きながら、上の音をピタゴラス律などの旋律的音律で弾き下の音はそれに純正3度または6度で和音を付けるというのが大方のの合意であるように理解しました。
ピタゴラス音律は世界中で昔から琴のような弦楽器の音律として採用され、その旋律姓が良いことが認められています。ただこの音律はハーモニーの観点からは濁りが大きく単旋律の歌以外ではあまり用いられません。現在通常用いられる音律はオクターブを12の半音に均等に等比分割した平均律が主となっています。平均律の5度はピタゴラス5度に比べて1.96セント狭いもののかなり近い値であり、平均律はピタゴラス音律に準じた良好な旋律姓を有するとされています。とはいえ元々がLog2の1/12という無理数の等比列であるためどの和音も完全な響和が得られる筈はなく、特に長三度・単三度の和音を純正にとるには-13.69セント、+15.64セントもずらす必要があります。
重音やアンサンブルにおいてハーモニーを美しく響かせるには、旋律に随伴する3度なり6度なりの音を純正に近くとる必要があり、「重音3度の下の音や2ndVn/Va等の中声部の音はそのように弾くべし」というのが上記の結論ですが、一人で弾く重音の場合はまあそれで困らないとしても、アンサンブルで2ndVn/Vaなどの中声部を弾く立場としては非常に辛いものがあります。なぜならこれらのパートは主旋律があっての随伴音であり、この随伴音のみを旋律として弾くと随分調子外れな歌に聞こえるからです。即ち、主旋律と対旋律という旋律ラインとしての関係は成立し難くなります。
旋律を弾く人から見れば、「俺は美しく歌うからおまえら下々はそれに付けろ」でいいのかも知れませんが、中声部を弾く方もいつもその立場でいいというわけではなく、時には主旋律も廻ってくるのですから、その分析やら切替えが大変で、結局いつも音程に悩み続けることになります。ただ別スレッドの結論のように、今日の日本ではアンサンブルをする場合、プロもアマも関係なくこの考え方が主流となっているように思われます。(そう、僕らビオラ弾きの悩みの一つはここにあるのです。)
ところで先程のピタゴラス音律と平均律の話にも共通するのですが、バイオリンのチューニングをするとき、今時完全5度で4本とも合わせる人はいないと思います。それはA線からD線、G線と低くなるに従って5度が少しずつ広くなっていき平均律からもずれてしまうからです。それでチューニングするとき先生からも少し狭めに合わせるように指導されますが、普通一般的には、ほぼ平均律に合わせるようにチューニングしていることと思います。特にピアノと合わせるときは、殆どの場合ピアノが平均律で調律されているからです。ただ平均律のチューニングだとG線の開放弦に対してE線の開放弦が高すぎてハモらないばかりか、楽器の4本の弦が同時に共鳴する倍音関係にないため、楽器全体の響きが少し損しているように思います。
これを解決するため、ソロや弦楽アンサンブルの場合には調弦を完全5度より少し狭めに合わせることがあります。この手法は弦楽器のの響きを良くすると同時に、弦楽四重奏のレッスンでよく言われる「ビオラとチェロの低弦は少し高めにチューニングするように」という教えとも符合しています。少し高めに合わせた低弦のG音やC音がバイオリンのE線とハモりやすくなるのです。
このチューニングをもう少しシステマティックに行うと、話は古典音律のヴェルクマイスター1のIIIやキルンベルがーIIIといった音律につながっていくのです。こういう古典音律の話を持ち出すとチェンバロのチューニングか古楽お宅の範疇だと考えられがちですが、実はヨーロッパの名門オーケストラや四重奏団には夫々独自にこの様なチューニングシステム(音律)が備わっているのではないかと思われます。よく日本人の演奏家がヨーロッパのオーケストラ団員になると、演奏する音程がはじめの何年かそれまで自分が持っていた音程感と異なることに苦労するという話を聴きますが、それが一つの証だとは言えないでしょうか。
ハイドンがから、モーツアルト、ベートーベン、そしてロマン派に至る音楽の系譜の中では調性感に溢れる曲が創られてきました。この調性感というのは12の音名それぞれの長調・短調合わせて24の調性が独自に有する旋律とハーモニーの色彩感を言います。よく言われるニ長調は祭典的だとかハ短調が悲劇的だとかいうあれのことです。しかし、実は平均律で演奏すると長調と短調の差は勿論ありますが、調の差はピッチの差でしかなく、そこに調毎に異なる共通の色彩感といったものの存在を感じる人は少ない筈です。この調性感はハイドンやモーツアルトが愛好したミーントーン(中全音律)からロマン派に至る音楽に用いられたヴェルクマイスターやキルンベルガー等の古典音律で演奏するときに始めて明確になる概念だと言えます。音律の古典という言葉のイメージとは裏腹にしっかりロマン派の時代まで継承されていたのです。
一つの調で一曲が終わるなら純正律で調律して演奏できます。しかし、途中で転調があると純正律では対応できなくなってしまいます。そこで、一回の調律で各調に対応できるように考え出されたのがこれらの古典音律です。1オクターブに12の鍵盤を用いて、全ての調で和音を純正に響かせることは元々無理なので、不響和になってしまう各音のピッチを少しずつ調整して不快感の少ない美しい響きになるように工夫したのです。これらの音律は一般的に調号(♯や♭)が少ない調では和音が平明に響き、調号が増えるに従って和音に緊張感が加わって旋律性に勝った色彩感になるとされています。この様に演奏に用いる音律と調性感はと切っても切れない関係にあるのです。
A線に比べてD線、G線とC線を平均律より夫々3.5~3.9セントずつ狭めにチューニングすると、低弦は夫々前述のキルンベルがーIII(KB)及びヴェルクマイスター1のIII(VM)になります。またE線をA線に比べて3.5セント狭めにするとKM、完全5度でチューニングするとVMになります。現在はこれらの古典音律をセットできるチューナーがかなり安価に販売されているので、そのつもりになればすぐ試してみることが出来ます。
Vnではよく分からないかも知れませんが、一度このどちらかに調弦してVaなりVcなりをアルバン・ベルクSQやイタリアSQのCDと一緒に弾いてみてください。それぞれのSQがどの音律を採用しているのか正確なところは判りませんが、これと同じ傾向の音律を用いて演奏していることが実感できます。平均律でチューニングしたVaやVcでは決して彼らのハーモニーを共有できないことがお分かりになると思います。(僕がABQとVMで合わせると開放弦のC音のみ自分の方が高すぎる感じがしますから、VMより多分KBの方が近いのだろうと思います。)
弦楽四重奏を演る人は、是非一度こうした音律で各楽器をチューニングしてアンサンブルしてみることをお勧めします。必ずや新しいハーモニーの世界を発見することと思います。こうすれば、それぞれのパートの旋律性も明確で、ハーモニーも純正とは少し異なるかも知れませんが美しい響きを体感することが出来ます。ロマン派なまでの音楽に現れる調性感はこうした古典音律を用いて演奏することによってはじめて現代に蘇らせることが出来るのです。そしてこういう音律で演奏する何よりの歓びは、これまでいつも旋律ラインに従属しなければならなかった随伴音を弾くパートが対等な立場で活き活きとアンサンブル出来るようになることです。
元のスレッドの議論ではバイオリンや弦楽四重奏で重音または和音を弾くとき、へマン著の「弦楽器のイントネーション」の弦楽四重奏の例を引きながら、上の音をピタゴラス律などの旋律的音律で弾き下の音はそれに純正3度または6度で和音を付けるというのが大方のの合意であるように理解しました。
ピタゴラス音律は世界中で昔から琴のような弦楽器の音律として採用され、その旋律姓が良いことが認められています。ただこの音律はハーモニーの観点からは濁りが大きく単旋律の歌以外ではあまり用いられません。現在通常用いられる音律はオクターブを12の半音に均等に等比分割した平均律が主となっています。平均律の5度はピタゴラス5度に比べて1.96セント狭いもののかなり近い値であり、平均律はピタゴラス音律に準じた良好な旋律姓を有するとされています。とはいえ元々がLog2の1/12という無理数の等比列であるためどの和音も完全な響和が得られる筈はなく、特に長三度・単三度の和音を純正にとるには-13.69セント、+15.64セントもずらす必要があります。
重音やアンサンブルにおいてハーモニーを美しく響かせるには、旋律に随伴する3度なり6度なりの音を純正に近くとる必要があり、「重音3度の下の音や2ndVn/Va等の中声部の音はそのように弾くべし」というのが上記の結論ですが、一人で弾く重音の場合はまあそれで困らないとしても、アンサンブルで2ndVn/Vaなどの中声部を弾く立場としては非常に辛いものがあります。なぜならこれらのパートは主旋律があっての随伴音であり、この随伴音のみを旋律として弾くと随分調子外れな歌に聞こえるからです。即ち、主旋律と対旋律という旋律ラインとしての関係は成立し難くなります。
旋律を弾く人から見れば、「俺は美しく歌うからおまえら下々はそれに付けろ」でいいのかも知れませんが、中声部を弾く方もいつもその立場でいいというわけではなく、時には主旋律も廻ってくるのですから、その分析やら切替えが大変で、結局いつも音程に悩み続けることになります。ただ別スレッドの結論のように、今日の日本ではアンサンブルをする場合、プロもアマも関係なくこの考え方が主流となっているように思われます。(そう、僕らビオラ弾きの悩みの一つはここにあるのです。)
ところで先程のピタゴラス音律と平均律の話にも共通するのですが、バイオリンのチューニングをするとき、今時完全5度で4本とも合わせる人はいないと思います。それはA線からD線、G線と低くなるに従って5度が少しずつ広くなっていき平均律からもずれてしまうからです。それでチューニングするとき先生からも少し狭めに合わせるように指導されますが、普通一般的には、ほぼ平均律に合わせるようにチューニングしていることと思います。特にピアノと合わせるときは、殆どの場合ピアノが平均律で調律されているからです。ただ平均律のチューニングだとG線の開放弦に対してE線の開放弦が高すぎてハモらないばかりか、楽器の4本の弦が同時に共鳴する倍音関係にないため、楽器全体の響きが少し損しているように思います。
これを解決するため、ソロや弦楽アンサンブルの場合には調弦を完全5度より少し狭めに合わせることがあります。この手法は弦楽器のの響きを良くすると同時に、弦楽四重奏のレッスンでよく言われる「ビオラとチェロの低弦は少し高めにチューニングするように」という教えとも符合しています。少し高めに合わせた低弦のG音やC音がバイオリンのE線とハモりやすくなるのです。
このチューニングをもう少しシステマティックに行うと、話は古典音律のヴェルクマイスター1のIIIやキルンベルがーIIIといった音律につながっていくのです。こういう古典音律の話を持ち出すとチェンバロのチューニングか古楽お宅の範疇だと考えられがちですが、実はヨーロッパの名門オーケストラや四重奏団には夫々独自にこの様なチューニングシステム(音律)が備わっているのではないかと思われます。よく日本人の演奏家がヨーロッパのオーケストラ団員になると、演奏する音程がはじめの何年かそれまで自分が持っていた音程感と異なることに苦労するという話を聴きますが、それが一つの証だとは言えないでしょうか。
ハイドンがから、モーツアルト、ベートーベン、そしてロマン派に至る音楽の系譜の中では調性感に溢れる曲が創られてきました。この調性感というのは12の音名それぞれの長調・短調合わせて24の調性が独自に有する旋律とハーモニーの色彩感を言います。よく言われるニ長調は祭典的だとかハ短調が悲劇的だとかいうあれのことです。しかし、実は平均律で演奏すると長調と短調の差は勿論ありますが、調の差はピッチの差でしかなく、そこに調毎に異なる共通の色彩感といったものの存在を感じる人は少ない筈です。この調性感はハイドンやモーツアルトが愛好したミーントーン(中全音律)からロマン派に至る音楽に用いられたヴェルクマイスターやキルンベルガー等の古典音律で演奏するときに始めて明確になる概念だと言えます。音律の古典という言葉のイメージとは裏腹にしっかりロマン派の時代まで継承されていたのです。
一つの調で一曲が終わるなら純正律で調律して演奏できます。しかし、途中で転調があると純正律では対応できなくなってしまいます。そこで、一回の調律で各調に対応できるように考え出されたのがこれらの古典音律です。1オクターブに12の鍵盤を用いて、全ての調で和音を純正に響かせることは元々無理なので、不響和になってしまう各音のピッチを少しずつ調整して不快感の少ない美しい響きになるように工夫したのです。これらの音律は一般的に調号(♯や♭)が少ない調では和音が平明に響き、調号が増えるに従って和音に緊張感が加わって旋律性に勝った色彩感になるとされています。この様に演奏に用いる音律と調性感はと切っても切れない関係にあるのです。
A線に比べてD線、G線とC線を平均律より夫々3.5~3.9セントずつ狭めにチューニングすると、低弦は夫々前述のキルンベルがーIII(KB)及びヴェルクマイスター1のIII(VM)になります。またE線をA線に比べて3.5セント狭めにするとKM、完全5度でチューニングするとVMになります。現在はこれらの古典音律をセットできるチューナーがかなり安価に販売されているので、そのつもりになればすぐ試してみることが出来ます。
Vnではよく分からないかも知れませんが、一度このどちらかに調弦してVaなりVcなりをアルバン・ベルクSQやイタリアSQのCDと一緒に弾いてみてください。それぞれのSQがどの音律を採用しているのか正確なところは判りませんが、これと同じ傾向の音律を用いて演奏していることが実感できます。平均律でチューニングしたVaやVcでは決して彼らのハーモニーを共有できないことがお分かりになると思います。(僕がABQとVMで合わせると開放弦のC音のみ自分の方が高すぎる感じがしますから、VMより多分KBの方が近いのだろうと思います。)
弦楽四重奏を演る人は、是非一度こうした音律で各楽器をチューニングしてアンサンブルしてみることをお勧めします。必ずや新しいハーモニーの世界を発見することと思います。こうすれば、それぞれのパートの旋律性も明確で、ハーモニーも純正とは少し異なるかも知れませんが美しい響きを体感することが出来ます。ロマン派なまでの音楽に現れる調性感はこうした古典音律を用いて演奏することによってはじめて現代に蘇らせることが出来るのです。そしてこういう音律で演奏する何よりの歓びは、これまでいつも旋律ラインに従属しなければならなかった随伴音を弾くパートが対等な立場で活き活きとアンサンブル出来るようになることです。
ヴァイオリン掲示板に戻る
3 / 5 ページ [ 43コメント ]
【ご参考】
[35513]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月16日 00:25
投稿者:通りすがり(ID:IBIIcHY)
横から口出しすることをお許しください。
このスレッドを大変興味深く読ませていただいているのですが、
アマチュアチェロ弾き様の
>五度を狭くすることによりVnやピアノとのより良いイントネーションが作られる、と言っているわけですから、明らかに「純正五度から平均律五度にする」という意味だと思います
は論理の飛躍があると思います。
ピアノと調和する=平均律?なのでしょうか。
この点をスレ主様が問題にしているように思いますがいかがでしょうか。
このスレッドを大変興味深く読ませていただいているのですが、
アマチュアチェロ弾き様の
>五度を狭くすることによりVnやピアノとのより良いイントネーションが作られる、と言っているわけですから、明らかに「純正五度から平均律五度にする」という意味だと思います
は論理の飛躍があると思います。
ピアノと調和する=平均律?なのでしょうか。
この点をスレ主様が問題にしているように思いますがいかがでしょうか。
[35516]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月16日 02:54
投稿者:スガラボット(ID:lCJGcxA)
<アマチュアチェロ弾き>さん、
僕はこのスレッドで、Vc/Vaの低弦の調弦を平均律で行うとVnのE線と響和しないし、アンサンブルをハモらせることに大変苦労する。従って調弦の5度を平均律より少し狭めに合わせるようにしてはどうかと提言してきました。この議論を展開する上で、僕はかなり精緻に一つひとつ、事実や因果関係を積み重ねてきたつもりです。 その議論の最終段階に至って、アマチュアチェロ弾きさんが「平均律で合わせることが明らかでしょう」と総括されたので、僕は「…議論を…切り捨てようとされているのですか。」と書きました。 少し言葉がきつかったかも知れませんが、これまでの議論の経過を吟味することなく、ご自分の主張だけを「明らか」と総括されたので、自分は一体何を議論してきたんだろうかと思ってしまいました。
この議論の中で、アマチュアチェロ弾きさんと僕の間にはまず基本認識において相違がありました。それはアマチュアチェロ弾きさんが『弦楽器の調弦は一般的に「ピタゴラス五度」で行われている』と認識されていることに対して、僕がそれが『平均律五度』で行われていると認識していることです。 我々は両者ともアマチュアという立場は変わりませんが、僕個人は日本の音楽業界でメシを食っていくつもりなら、別段の指定がない限り「平均律」で合わせられないようでは仕事はないと思っています。 弦楽器を習い始めたとき、先生から最初に指導される五度は「ピタゴラス的」かも知れませんが、いつまでもそれでは音大では通用しないでしょう。
まずこの出発点が違うのです。 ですからアマチュアチェロ弾きさんの解釈では「ピタゴラス五度」より狭いのは「平均律五度」で矛盾しないのでしょうが、僕の場合は「平均律五度」よりシャープな(狭い)五度という解釈になります。 それでも僕は自分の主張を述べるだけではなく、この二つの見解のうちどちらが正しいのか分かると良いですねという意味で「ガルネリカルテットのいう"fifth"(五度)がピタゴラス五度なのか平均律五度なのか判れば手がかりになると思うんですけど。」と書いたわけです。 それを一方的に『「平均律」は明らかでしょう』と言われれば、議論の「切り捨て」ととるのが自然ではないでしょうか。
あと<通りすがり>さんから頂いたコメントで、「ピアノと調和する=平均律?なのでしょうか。」という件に関して、僕個人としてはこの「?」を頂いたことは僕の議論の方向性にも沿ったもので有り難いのですが、この命題だけ考えれば通常は「?」ではなく「YES」だと思います。 ただ元の引用文はグァルネリカルテットが「カルテットの技法」の中で説明している
文章ですよね。 だから原文の「much better intonation when playing with the violins or with a piano.」では最後にピアノにも言及しているけれど、バイオリン(複数)と弾くときにより良いイントネーションが創り出せることが重要なはずで、そのために五度を狭くしなさいと言っている訳です。
これを受けて、僕の主張は「ピタゴラス五度」の調弦ではうまく響和しないのは当然として、「平均律五度」でも僕が散々議論してきたように色々不都合があるため、もう少しシャープに調弦するようにアドバイスされているんでしょう、という論旨になるのです。
これで「皆さんにも分かるように冷静に説明」したことになりますでしょうか?
僕はこのスレッドで、Vc/Vaの低弦の調弦を平均律で行うとVnのE線と響和しないし、アンサンブルをハモらせることに大変苦労する。従って調弦の5度を平均律より少し狭めに合わせるようにしてはどうかと提言してきました。この議論を展開する上で、僕はかなり精緻に一つひとつ、事実や因果関係を積み重ねてきたつもりです。 その議論の最終段階に至って、アマチュアチェロ弾きさんが「平均律で合わせることが明らかでしょう」と総括されたので、僕は「…議論を…切り捨てようとされているのですか。」と書きました。 少し言葉がきつかったかも知れませんが、これまでの議論の経過を吟味することなく、ご自分の主張だけを「明らか」と総括されたので、自分は一体何を議論してきたんだろうかと思ってしまいました。
この議論の中で、アマチュアチェロ弾きさんと僕の間にはまず基本認識において相違がありました。それはアマチュアチェロ弾きさんが『弦楽器の調弦は一般的に「ピタゴラス五度」で行われている』と認識されていることに対して、僕がそれが『平均律五度』で行われていると認識していることです。 我々は両者ともアマチュアという立場は変わりませんが、僕個人は日本の音楽業界でメシを食っていくつもりなら、別段の指定がない限り「平均律」で合わせられないようでは仕事はないと思っています。 弦楽器を習い始めたとき、先生から最初に指導される五度は「ピタゴラス的」かも知れませんが、いつまでもそれでは音大では通用しないでしょう。
まずこの出発点が違うのです。 ですからアマチュアチェロ弾きさんの解釈では「ピタゴラス五度」より狭いのは「平均律五度」で矛盾しないのでしょうが、僕の場合は「平均律五度」よりシャープな(狭い)五度という解釈になります。 それでも僕は自分の主張を述べるだけではなく、この二つの見解のうちどちらが正しいのか分かると良いですねという意味で「ガルネリカルテットのいう"fifth"(五度)がピタゴラス五度なのか平均律五度なのか判れば手がかりになると思うんですけど。」と書いたわけです。 それを一方的に『「平均律」は明らかでしょう』と言われれば、議論の「切り捨て」ととるのが自然ではないでしょうか。
あと<通りすがり>さんから頂いたコメントで、「ピアノと調和する=平均律?なのでしょうか。」という件に関して、僕個人としてはこの「?」を頂いたことは僕の議論の方向性にも沿ったもので有り難いのですが、この命題だけ考えれば通常は「?」ではなく「YES」だと思います。 ただ元の引用文はグァルネリカルテットが「カルテットの技法」の中で説明している
文章ですよね。 だから原文の「much better intonation when playing with the violins or with a piano.」では最後にピアノにも言及しているけれど、バイオリン(複数)と弾くときにより良いイントネーションが創り出せることが重要なはずで、そのために五度を狭くしなさいと言っている訳です。
これを受けて、僕の主張は「ピタゴラス五度」の調弦ではうまく響和しないのは当然として、「平均律五度」でも僕が散々議論してきたように色々不都合があるため、もう少しシャープに調弦するようにアドバイスされているんでしょう、という論旨になるのです。
これで「皆さんにも分かるように冷静に説明」したことになりますでしょうか?
[35532]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月17日 12:04
投稿者:スガラボット(ID:lCJGcxA)
ハイドンSQ「皇帝」2楽章のイントネーションについて、jackさんの帰国を待つのも申し訳ないので、「弦楽器のイントネーション (副題)メロディーのハーモニーの耳を良くするために」クリスティーネ・ヘマン著 海野義雄監修 竹内ふみ子訳 (株)シンフォニア(刊)を取り寄せてみました。アマゾンのネットショップでは定価の二倍ほどもする古本しかないみたいですが、出版社名でネット検索すると出てくるお店に注文するとあっさり新品を定価で送ってくれました。変なの~。
昨日来たばかりで拾い読みしただけなんですけど、「皇帝」の話は、第5章 異なるイントネーションの交替(P57~) の中でニッカーソンが音響測定器(クロマティック・ストロボ)を使って6曲の非常に音楽的な弦楽四重奏曲(著書では演奏団体は不明)を調査した結果の話として書かれています。
これによるとドイツ国歌としても知られるこの変奏曲の主題は(ピタゴラス音律に近い)「線的」イントネーションで弾かれ、これに和音を付ける2ndVnはその旋律線に合わせて和音を付けているとのこと。ご存知のようにこのテーマの最初の4音はテーマが「G-A-H-A」と動き、これに対して2ndVnが「H-D-G-Fis」と和音を付けます。この時、1stVnが旋律をピタゴラス音律的に弾くと3つめのHを高めにとることになりますが、これと合わせるため、2ndVnはG線解放のとの共鳴を諦めてまで、D線上のG音を高めに弾いていることが書かれています。
この現象について、ヘマン女史はニッカーソンの「和音の要求は旋律の要求に従属している」という言葉を引用しています。音楽を横(線的)に、或いは縦(和音的)に聴くという言葉は日本でも使われますが、一般的には人の線的なメロディー(旋律=線=横)の記憶が響き(和音=縦)の記憶に優先すると言うことなのでしょう。
この本の「訳者あとがき」によると、ヘマン女史はバーゼルの音楽アカデミー出身で、カール・フレッシュやアドルフ・ブッシュの下で研鑽を積み、1957年からバーゼルのアカデミー、その後ルツェルンのコンセルヴァトワールで室内楽やオーケストラを教えられたそうです。この本を書かれたきっかけはルツェルンでバウムガルトナーが導入した「弦楽器奏者のために特別な聴力養成を図り、イントネーションの問題を扱う」コースに基づいていて、原著は1964年、ベーレンライターから"Intonation auf Streichinstrumenten"として出版されています。
時代的に、この本は最近の古典音律復興運動の少し前に書かれており、玉木氏が指摘されたように古典音律などに関しては「誤解と限界」があっても無理からぬこととは思いました。
1960年代のヨーロッパで、「非常に音楽的な弦楽四重奏」がハイドンの「皇帝」2楽章のバリエーションを旋律的に美しく演奏するため、2ndVnが開放弦の共鳴を犠牲にしてもピタゴラス旋律に合う3度和音を弾いていたという話はある程度ショックです。人を感動させる演奏というのはそこまで厳しいものであることを再認識しました。しかし、です。 僕が提唱している「弦楽四重奏で古典音律的な狭い5度で調弦する」という手法は、これと同等とは言えないまでも同質の(最近どこかで聞いたような表現ですが…)効果を、奏者の負担なく達成できる現実的な手法だとは言えないでしょうか。
昨日来たばかりで拾い読みしただけなんですけど、「皇帝」の話は、第5章 異なるイントネーションの交替(P57~) の中でニッカーソンが音響測定器(クロマティック・ストロボ)を使って6曲の非常に音楽的な弦楽四重奏曲(著書では演奏団体は不明)を調査した結果の話として書かれています。
これによるとドイツ国歌としても知られるこの変奏曲の主題は(ピタゴラス音律に近い)「線的」イントネーションで弾かれ、これに和音を付ける2ndVnはその旋律線に合わせて和音を付けているとのこと。ご存知のようにこのテーマの最初の4音はテーマが「G-A-H-A」と動き、これに対して2ndVnが「H-D-G-Fis」と和音を付けます。この時、1stVnが旋律をピタゴラス音律的に弾くと3つめのHを高めにとることになりますが、これと合わせるため、2ndVnはG線解放のとの共鳴を諦めてまで、D線上のG音を高めに弾いていることが書かれています。
この現象について、ヘマン女史はニッカーソンの「和音の要求は旋律の要求に従属している」という言葉を引用しています。音楽を横(線的)に、或いは縦(和音的)に聴くという言葉は日本でも使われますが、一般的には人の線的なメロディー(旋律=線=横)の記憶が響き(和音=縦)の記憶に優先すると言うことなのでしょう。
この本の「訳者あとがき」によると、ヘマン女史はバーゼルの音楽アカデミー出身で、カール・フレッシュやアドルフ・ブッシュの下で研鑽を積み、1957年からバーゼルのアカデミー、その後ルツェルンのコンセルヴァトワールで室内楽やオーケストラを教えられたそうです。この本を書かれたきっかけはルツェルンでバウムガルトナーが導入した「弦楽器奏者のために特別な聴力養成を図り、イントネーションの問題を扱う」コースに基づいていて、原著は1964年、ベーレンライターから"Intonation auf Streichinstrumenten"として出版されています。
時代的に、この本は最近の古典音律復興運動の少し前に書かれており、玉木氏が指摘されたように古典音律などに関しては「誤解と限界」があっても無理からぬこととは思いました。
1960年代のヨーロッパで、「非常に音楽的な弦楽四重奏」がハイドンの「皇帝」2楽章のバリエーションを旋律的に美しく演奏するため、2ndVnが開放弦の共鳴を犠牲にしてもピタゴラス旋律に合う3度和音を弾いていたという話はある程度ショックです。人を感動させる演奏というのはそこまで厳しいものであることを再認識しました。しかし、です。 僕が提唱している「弦楽四重奏で古典音律的な狭い5度で調弦する」という手法は、これと同等とは言えないまでも同質の(最近どこかで聞いたような表現ですが…)効果を、奏者の負担なく達成できる現実的な手法だとは言えないでしょうか。
[35567]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月18日 23:20
投稿者:コクシネル(ID:FpIpmWY)
ハイドンの皇帝は、確かクライスラー編曲の、バッハ無伴奏風の沢山和音がついたものがありますので、これを弾けば一人で検証できるかと思います。
[35572]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月19日 01:54
投稿者:yas(ID:NCViMXk)
コクシネルさん
>ハイドンの皇帝は、確かクライスラー編曲のバッハ無伴奏風の沢山和音がついたものがありますので、
クライスラーにもあったんですか。僕はヴィエニアフスキのものしか知りませんでした。
>ハイドンの皇帝は、確かクライスラー編曲のバッハ無伴奏風の沢山和音がついたものがありますので、
クライスラーにもあったんですか。僕はヴィエニアフスキのものしか知りませんでした。
[35574]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月19日 03:39
投稿者:jack(ID:OZlzAjg)
スガラボット さん、先週帰国しましたがオケのリハや1ヶ月分たまった郵便物の整理などの雑用でレスが遅くなりました。
ヘマンの著書を購入されたとのこと。もう絶版と思ってました。さわりを[35532]
に引用されましたが、p75でピアノとあわせるときの調弦方に触れていますので追記しておきます。
p75より引用
『ピアノを使う室内楽(トリオ、カルテット、クインテット)では平均律の鍵盤楽器にイントネーションを合わせることが第1の急務となります。しかも調弦の際には既にG線、C線がピアノのg, cより低くならないように留意せねばなりません。次にD線をバランス良く合わせます(シューマンのピアノ5重奏曲Es-durではヴィオラ奏者の開放弦C線がピアノに合っていない場合、特にひどい報いを受けます)。個々の楽器の速い走句はもちろんピュタゴラス・イントネーションで奏され、ピアノから独立している和音的な弦の走句は自然純正イントネーションで弾かれます。』
これは、ピアノとの室内楽は弦の開放弦はピアノに合わせる、ピアノなしの弦のみでは純正5度に調弦すると解釈できないでしょうか?ヴェルクマイスター調律されたピアノと純正5度調弦の弦との室内楽では開放のDやGは低すぎて使いものにならずとても弾きにくいです。
もし古典音律など純正5度以外の調弦でアンサンブルをされるときは、リーダーの調弦に他の人が1本ずつあわせて個人差をなくし1度と8度の純正度を確保する必要があると思います。BCJやPBOの古楽器演奏会でそのような調弦法を何度か見たことがあります。
ヘマンの著書を購入されたとのこと。もう絶版と思ってました。さわりを[35532]
[35532]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月17日 12:04
投稿者:スガラボット(ID:lCJGcxA)
ハイドンSQ「皇帝」2楽章のイントネーションについて、jackさんの帰国を待つのも申し訳ないので、「弦楽器のイントネーション (副題)メロディーのハーモニーの耳を良くするために」クリスティーネ・ヘマン著 海野義雄監修 竹内ふみ子訳 (株)シンフォニア(刊)を取り寄せてみました。アマゾンのネットショップでは定価の二倍ほどもする古本しかないみたいですが、出版社名でネット検索すると出てくるお店に注文するとあっさり新品を定価で送ってくれました。変なの~。
昨日来たばかりで拾い読みしただけなんですけど、「皇帝」の話は、第5章 異なるイントネーションの交替(P57~) の中でニッカーソンが音響測定器(クロマティック・ストロボ)を使って6曲の非常に音楽的な弦楽四重奏曲(著書では演奏団体は不明)を調査した結果の話として書かれています。
これによるとドイツ国歌としても知られるこの変奏曲の主題は(ピタゴラス音律に近い)「線的」イントネーションで弾かれ、これに和音を付ける2ndVnはその旋律線に合わせて和音を付けているとのこと。ご存知のようにこのテーマの最初の4音はテーマが「G-A-H-A」と動き、これに対して2ndVnが「H-D-G-Fis」と和音を付けます。この時、1stVnが旋律をピタゴラス音律的に弾くと3つめのHを高めにとることになりますが、これと合わせるため、2ndVnはG線解放のとの共鳴を諦めてまで、D線上のG音を高めに弾いていることが書かれています。
この現象について、ヘマン女史はニッカーソンの「和音の要求は旋律の要求に従属している」という言葉を引用しています。音楽を横(線的)に、或いは縦(和音的)に聴くという言葉は日本でも使われますが、一般的には人の線的なメロディー(旋律=線=横)の記憶が響き(和音=縦)の記憶に優先すると言うことなのでしょう。
この本の「訳者あとがき」によると、ヘマン女史はバーゼルの音楽アカデミー出身で、カール・フレッシュやアドルフ・ブッシュの下で研鑽を積み、1957年からバーゼルのアカデミー、その後ルツェルンのコンセルヴァトワールで室内楽やオーケストラを教えられたそうです。この本を書かれたきっかけはルツェルンでバウムガルトナーが導入した「弦楽器奏者のために特別な聴力養成を図り、イントネーションの問題を扱う」コースに基づいていて、原著は1964年、ベーレンライターから"Intonation auf Streichinstrumenten"として出版されています。
時代的に、この本は最近の古典音律復興運動の少し前に書かれており、玉木氏が指摘されたように古典音律などに関しては「誤解と限界」があっても無理からぬこととは思いました。
1960年代のヨーロッパで、「非常に音楽的な弦楽四重奏」がハイドンの「皇帝」2楽章のバリエーションを旋律的に美しく演奏するため、2ndVnが開放弦の共鳴を犠牲にしてもピタゴラス旋律に合う3度和音を弾いていたという話はある程度ショックです。人を感動させる演奏というのはそこまで厳しいものであることを再認識しました。しかし、です。 僕が提唱している「弦楽四重奏で古典音律的な狭い5度で調弦する」という手法は、これと同等とは言えないまでも同質の(最近どこかで聞いたような表現ですが…)効果を、奏者の負担なく達成できる現実的な手法だとは言えないでしょうか。
昨日来たばかりで拾い読みしただけなんですけど、「皇帝」の話は、第5章 異なるイントネーションの交替(P57~) の中でニッカーソンが音響測定器(クロマティック・ストロボ)を使って6曲の非常に音楽的な弦楽四重奏曲(著書では演奏団体は不明)を調査した結果の話として書かれています。
これによるとドイツ国歌としても知られるこの変奏曲の主題は(ピタゴラス音律に近い)「線的」イントネーションで弾かれ、これに和音を付ける2ndVnはその旋律線に合わせて和音を付けているとのこと。ご存知のようにこのテーマの最初の4音はテーマが「G-A-H-A」と動き、これに対して2ndVnが「H-D-G-Fis」と和音を付けます。この時、1stVnが旋律をピタゴラス音律的に弾くと3つめのHを高めにとることになりますが、これと合わせるため、2ndVnはG線解放のとの共鳴を諦めてまで、D線上のG音を高めに弾いていることが書かれています。
この現象について、ヘマン女史はニッカーソンの「和音の要求は旋律の要求に従属している」という言葉を引用しています。音楽を横(線的)に、或いは縦(和音的)に聴くという言葉は日本でも使われますが、一般的には人の線的なメロディー(旋律=線=横)の記憶が響き(和音=縦)の記憶に優先すると言うことなのでしょう。
この本の「訳者あとがき」によると、ヘマン女史はバーゼルの音楽アカデミー出身で、カール・フレッシュやアドルフ・ブッシュの下で研鑽を積み、1957年からバーゼルのアカデミー、その後ルツェルンのコンセルヴァトワールで室内楽やオーケストラを教えられたそうです。この本を書かれたきっかけはルツェルンでバウムガルトナーが導入した「弦楽器奏者のために特別な聴力養成を図り、イントネーションの問題を扱う」コースに基づいていて、原著は1964年、ベーレンライターから"Intonation auf Streichinstrumenten"として出版されています。
時代的に、この本は最近の古典音律復興運動の少し前に書かれており、玉木氏が指摘されたように古典音律などに関しては「誤解と限界」があっても無理からぬこととは思いました。
1960年代のヨーロッパで、「非常に音楽的な弦楽四重奏」がハイドンの「皇帝」2楽章のバリエーションを旋律的に美しく演奏するため、2ndVnが開放弦の共鳴を犠牲にしてもピタゴラス旋律に合う3度和音を弾いていたという話はある程度ショックです。人を感動させる演奏というのはそこまで厳しいものであることを再認識しました。しかし、です。 僕が提唱している「弦楽四重奏で古典音律的な狭い5度で調弦する」という手法は、これと同等とは言えないまでも同質の(最近どこかで聞いたような表現ですが…)効果を、奏者の負担なく達成できる現実的な手法だとは言えないでしょうか。
p75より引用
『ピアノを使う室内楽(トリオ、カルテット、クインテット)では平均律の鍵盤楽器にイントネーションを合わせることが第1の急務となります。しかも調弦の際には既にG線、C線がピアノのg, cより低くならないように留意せねばなりません。次にD線をバランス良く合わせます(シューマンのピアノ5重奏曲Es-durではヴィオラ奏者の開放弦C線がピアノに合っていない場合、特にひどい報いを受けます)。個々の楽器の速い走句はもちろんピュタゴラス・イントネーションで奏され、ピアノから独立している和音的な弦の走句は自然純正イントネーションで弾かれます。』
これは、ピアノとの室内楽は弦の開放弦はピアノに合わせる、ピアノなしの弦のみでは純正5度に調弦すると解釈できないでしょうか?ヴェルクマイスター調律されたピアノと純正5度調弦の弦との室内楽では開放のDやGは低すぎて使いものにならずとても弾きにくいです。
もし古典音律など純正5度以外の調弦でアンサンブルをされるときは、リーダーの調弦に他の人が1本ずつあわせて個人差をなくし1度と8度の純正度を確保する必要があると思います。BCJやPBOの古楽器演奏会でそのような調弦法を何度か見たことがあります。
[35576]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月19日 15:17
投稿者:スガラボット(ID:l1cQQwA)
<コクシネル>さん、<yas>さん、
レス有り難うございます。 ただこのスレッドで書いていることは、カルテットを弾くときのイントネーションについての話で、一人で弾くときとは別議論を展開しています。 ヴァイオリンなどで重音を一人で弾くときは、「自分のとった旋律ラインと純正に響くように他の和音を付ける」と言うことで一応の結論は出ていたと思います。
<jack>さん、
へマンの著書で、ご指摘の第8章 調弦の話は実は最初に読みました。jackさんが書かれたように、本では「ピアノとの室内楽は弦の開放弦はピアノに合わせる、ピアノなしの弦のみでは純正5度に調弦する」と云っているように思います。 これが今現在の一般常識であることは1964年出版の本からも確認できるという訳です。
まあこの常識に敢えて異を唱える僕は相当な反逆児だということになりますが、昨日もグルミュオー・トリオの弾く弦楽トリオ、モーツアルトのディベルティメント K.563のCDと一緒に合わせて弾いてみました。 Aを442Hzで、Vaのチューニングをキルンベルガー3にして合わせてみたのですが、実にこれがピッタリハモるのです。
僕のチューナーはかれこれもう15年くらい前のKORG MT-1200という日本のマルチテンペラメント・チューナーのハシリみたいな代物ですが、これで442Hzに合わせたAはもう一台のOT-12で測ると443Hzくらいに出ます。 KORGはこのMT-1200が生産中止になってから暫くマルチテンペラメント・チューナーが無かったようですが、一昨年にOT-12、その後OT-1200という機種が出て一万円を切るかなりお手頃価格で入手できます。 半信半疑の皆さんもこういうキカイを使って一度試してみられると、その効果の程がお分かりになるのではないでしょうか。
<jack>さん、
> もし古典音律など純正5度以外の調弦でアンサンブルをされるときは、リーダーの調弦に他の人が1本ずつあわせて個人差をなくし1度と8度の純正度を確保する必要があると思います。
これはその通りで、基本は各メンバーが弦一本ずつ合わせます。 ただ、最近はカルテットの各メンバーが同じチューナを持っているのでみんなの耳がこの五度に慣れてしまい、Aだけ合わせてからあとは普通に調弦しても、大体この調弦になってしまいます。 この調弦にしてから、カルテットの練習時に「その音は1stVnが高い、いやVaが低い」などといった論争をメンバー間ですることはほとんど無くなりました。 ただし、少し不思議な話ですが、チェリストがVM-1のⅢで調弦してBachの無伴奏チェロ・ソナタを弾くとしっくりこないといっていました。 同じBachでも平均律クラヴィア曲集を聴くならこっちの方が良さそうなんですが…。 この事実は、これまで永年弾き込んだ曲に対する指を開く感覚が異なるのか、刷り込まれた音感に対する耳の感覚が異なるのかどちらなんでしょうね。
ですから、このイントネーション、相当音感の鋭い人にとっては(曲によって)少し違和感を感じるかも知れません。
レス有り難うございます。 ただこのスレッドで書いていることは、カルテットを弾くときのイントネーションについての話で、一人で弾くときとは別議論を展開しています。 ヴァイオリンなどで重音を一人で弾くときは、「自分のとった旋律ラインと純正に響くように他の和音を付ける」と言うことで一応の結論は出ていたと思います。
<jack>さん、
へマンの著書で、ご指摘の第8章 調弦の話は実は最初に読みました。jackさんが書かれたように、本では「ピアノとの室内楽は弦の開放弦はピアノに合わせる、ピアノなしの弦のみでは純正5度に調弦する」と云っているように思います。 これが今現在の一般常識であることは1964年出版の本からも確認できるという訳です。
まあこの常識に敢えて異を唱える僕は相当な反逆児だということになりますが、昨日もグルミュオー・トリオの弾く弦楽トリオ、モーツアルトのディベルティメント K.563のCDと一緒に合わせて弾いてみました。 Aを442Hzで、Vaのチューニングをキルンベルガー3にして合わせてみたのですが、実にこれがピッタリハモるのです。
僕のチューナーはかれこれもう15年くらい前のKORG MT-1200という日本のマルチテンペラメント・チューナーのハシリみたいな代物ですが、これで442Hzに合わせたAはもう一台のOT-12で測ると443Hzくらいに出ます。 KORGはこのMT-1200が生産中止になってから暫くマルチテンペラメント・チューナーが無かったようですが、一昨年にOT-12、その後OT-1200という機種が出て一万円を切るかなりお手頃価格で入手できます。 半信半疑の皆さんもこういうキカイを使って一度試してみられると、その効果の程がお分かりになるのではないでしょうか。
<jack>さん、
> もし古典音律など純正5度以外の調弦でアンサンブルをされるときは、リーダーの調弦に他の人が1本ずつあわせて個人差をなくし1度と8度の純正度を確保する必要があると思います。
これはその通りで、基本は各メンバーが弦一本ずつ合わせます。 ただ、最近はカルテットの各メンバーが同じチューナを持っているのでみんなの耳がこの五度に慣れてしまい、Aだけ合わせてからあとは普通に調弦しても、大体この調弦になってしまいます。 この調弦にしてから、カルテットの練習時に「その音は1stVnが高い、いやVaが低い」などといった論争をメンバー間ですることはほとんど無くなりました。 ただし、少し不思議な話ですが、チェリストがVM-1のⅢで調弦してBachの無伴奏チェロ・ソナタを弾くとしっくりこないといっていました。 同じBachでも平均律クラヴィア曲集を聴くならこっちの方が良さそうなんですが…。 この事実は、これまで永年弾き込んだ曲に対する指を開く感覚が異なるのか、刷り込まれた音感に対する耳の感覚が異なるのかどちらなんでしょうね。
ですから、このイントネーション、相当音感の鋭い人にとっては(曲によって)少し違和感を感じるかも知れません。
[35583]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月20日 21:34
投稿者:ボテチ(ID:FzZQIgk)
話が少しずれますが。
平均律できれいに調律されたピアノの和音は、大、大、大好きです。きれいですから。
(バイオリンは平均律では弾かないけど。)
昔の人間と現代人では音感も変わってきているので、平均律を美しいと感じるのは普通だと思いますよ。
純正調や平均律以外の音を想定していない耳に古典音律が本当に現代人に美しく響くのか、興味深くはあります。
平均律できれいに調律されたピアノの和音は、大、大、大好きです。きれいですから。
(バイオリンは平均律では弾かないけど。)
昔の人間と現代人では音感も変わってきているので、平均律を美しいと感じるのは普通だと思いますよ。
純正調や平均律以外の音を想定していない耳に古典音律が本当に現代人に美しく響くのか、興味深くはあります。
[35584]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月20日 22:59
投稿者:?(ID:lEYDWRA)
途中から筋違いからも知れませんが。
バイオリンやチェロは、もともと純正調の楽器ではない、という前提を確認した方がいいのではないでしょうか。
バイオリンの開放弦のピッチが純正調と一致するのはD調のときのみです。チェロやビオラではG調のときのみです。ですからAを基準にするなら、バイオリンのG、ビオラ・チェロのC。Gは純正調と比較すると低すぎます。純正調で合わせるなら、調にもよりますが、ビオラ・チェロのC。Gは必然的に高くしなければなりません。オケのようなある程度あいまい度があるならともかく(というより、この方が響きが広がる?)、SQではそうはいかないでしょう。
スガラボットさんはこの高くするのをVMやKBにするといい、という意見だと思いますが、私は、これをどう解決するかというのが、その演奏者の特徴だと思います。そこには正解がないのがいいのではないかと思います。もちろん、押し付ける必要は初めからないわけですが。
メンデルスゾーンはモーツァルトに負けず劣らずの天才ですが、ホ短調のコンチェルトにG線の開放弦を持ってくるのは、さあ、ソリストはこれをどうする?と問われているようにも思います。
バイオリンやチェロは、もともと純正調の楽器ではない、という前提を確認した方がいいのではないでしょうか。
バイオリンの開放弦のピッチが純正調と一致するのはD調のときのみです。チェロやビオラではG調のときのみです。ですからAを基準にするなら、バイオリンのG、ビオラ・チェロのC。Gは純正調と比較すると低すぎます。純正調で合わせるなら、調にもよりますが、ビオラ・チェロのC。Gは必然的に高くしなければなりません。オケのようなある程度あいまい度があるならともかく(というより、この方が響きが広がる?)、SQではそうはいかないでしょう。
スガラボットさんはこの高くするのをVMやKBにするといい、という意見だと思いますが、私は、これをどう解決するかというのが、その演奏者の特徴だと思います。そこには正解がないのがいいのではないかと思います。もちろん、押し付ける必要は初めからないわけですが。
メンデルスゾーンはモーツァルトに負けず劣らずの天才ですが、ホ短調のコンチェルトにG線の開放弦を持ってくるのは、さあ、ソリストはこれをどうする?と問われているようにも思います。
[35585]
Re: 弦楽器のイントネーションとアンサンブル
投稿日時:2007年11月20日 23:50
投稿者:南社(ID:QgEYdDQ)
?さん
> バイオリンの開放弦のピッチが純正調と一致するのはD調の
> ときのみです。チェロやビオラではG調のときのみです。
分からなくなったので質問です。
5度を2つ重ねた音は純正調だけど、3つ重ねてしまうと純正調からハズれると理解してたけど、上に向かって重ねるのと下に向かって重ねるので違いはあるの?
バイオリンでA調で下に向かって5度を2つ重ねると純正調ではなくなる理由がよく分からない。
> バイオリンの開放弦のピッチが純正調と一致するのはD調の
> ときのみです。チェロやビオラではG調のときのみです。
分からなくなったので質問です。
5度を2つ重ねた音は純正調だけど、3つ重ねてしまうと純正調からハズれると理解してたけど、上に向かって重ねるのと下に向かって重ねるので違いはあるの?
バイオリンでA調で下に向かって5度を2つ重ねると純正調ではなくなる理由がよく分からない。
ヴァイオリン掲示板に戻る
3 / 5 ページ [ 43コメント ]