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ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年06月13日 20:49
投稿者:catgut(ID:MxCCaDI)
私は前スレッド、前々スレッドで、
「ヴァイオリンの音色は材質と形状、および調整によって決まり、
ヴァイオリンの塗装で音色が良くなることは基本的にない」と
客観的な証拠を多数提示して書いています。
どなたも塗装でヴァイオリンの音が良くなるという証拠を提示されて
いません。そして見当違いのコメントがしばしば付けられています。
これはいったいなぜなのでしょうか。ちょっと分析してみたいと思います。
「ヴァイオリンの音色は材質と形状、および調整によって決まり、
ヴァイオリンの塗装で音色が良くなることは基本的にない」と
客観的な証拠を多数提示して書いています。
どなたも塗装でヴァイオリンの音が良くなるという証拠を提示されて
いません。そして見当違いのコメントがしばしば付けられています。
これはいったいなぜなのでしょうか。ちょっと分析してみたいと思います。
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Re: ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年07月28日 10:00
投稿者:Xin(ID:QJMRgjA)
ニス材料の調達
楽器に塗る塗料は絵画の絵具と共通の材料が多いので当時のクレモナでも、塗装材料は画材屋さんで扱っているはずです。
・媒質(油、膠、樹脂)
・顔料
・その他、研磨材、筆など
むしろ、種類は絵画材料の方が豊富と思っています。
現在でも、塗料はホームセンターになければ、画材屋さんで購入できます。
調合された油も画材屋さんから買えたのではないでしょうか。
全ての絵描きさん、家具屋さんが原材料の調合までやっていたとは思われません。
楽器や家具の製作者は自分の好みで材料を選択して購入することはできたはずです。
もちろん、塗装の良し悪しは材料で決まるわけではありません、塗装方法も重要です。
むしろ、材料よりも塗装技術の方が重要です。
ストラドも一般的な材料を使って、名人技術で塗装したのではないかと思っています。
ところで、クレモナには画家や家具屋はいたのでしょうか。
楽器に塗る塗料は絵画の絵具と共通の材料が多いので当時のクレモナでも、塗装材料は画材屋さんで扱っているはずです。
・媒質(油、膠、樹脂)
・顔料
・その他、研磨材、筆など
むしろ、種類は絵画材料の方が豊富と思っています。
現在でも、塗料はホームセンターになければ、画材屋さんで購入できます。
調合された油も画材屋さんから買えたのではないでしょうか。
全ての絵描きさん、家具屋さんが原材料の調合までやっていたとは思われません。
楽器や家具の製作者は自分の好みで材料を選択して購入することはできたはずです。
もちろん、塗装の良し悪しは材料で決まるわけではありません、塗装方法も重要です。
むしろ、材料よりも塗装技術の方が重要です。
ストラドも一般的な材料を使って、名人技術で塗装したのではないかと思っています。
ところで、クレモナには画家や家具屋はいたのでしょうか。
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Re: ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年07月28日 22:16
投稿者:catgut(ID:JEd3dSk)
Xinさま、
Science and the Stradivariusという有名な記事には以下のように書かれています。
ストラディヴァリのニスは当時の多くの家具で使われたニスと同じです。
Claire Barlowらはニスと下地の成分を調べましたが、ほとんどがストラディヴァリの工房そばの「薬屋」(bought from the pharmacist shop next to Stradivari's workshop)で買えたであろうものばかりです。
ttp://physicsworld.com/cws/article/print/696
ヒル兄弟も"druggist"と書いているので、やはり「薬屋」が調合済みの
ニスを扱っていたと考えていたようです。もちろん現在の「薬屋」とは違う
のでしょう。
It may be there was some druggist in the town who supplied all the
makers with the requisite materials; and he may even have mixed
the varnish and sold it ready-made
なお、ヒル兄弟によると、ピクが1792年4月14日付けの手紙でリュポに
調合済みのニスを譲って欲しいと頼んだということです。
またヴァイオリン製作者であるJohn Dilworth氏が「グァダニーニが引っ越すとニスが変わる」件について書いていました。Dilworth氏は菊田氏がヴィエニアフスキコンクールで優勝した際の審査員の一人でもあります。
The Cambridge Companion to the Cello
googleの書籍検索で該当部分が読めます。
Giovanni Battista Guadagnini
His varnish varied considerably, doubtless on account of his unsettled career which took him from his birthplace, Piacenza, to Milan, Cremona, Parma and, finally, Turin
大意:グァダニーニのニスは明らかに彼の引っ越しが原因で大きく変わりました。
Dilworth氏のサイト
ttp://www.johndilworthviolins.co.uk/index.php
Science and the Stradivariusという有名な記事には以下のように書かれています。
ストラディヴァリのニスは当時の多くの家具で使われたニスと同じです。
Claire Barlowらはニスと下地の成分を調べましたが、ほとんどがストラディヴァリの工房そばの「薬屋」(bought from the pharmacist shop next to Stradivari's workshop)で買えたであろうものばかりです。
ttp://physicsworld.com/cws/article/print/696
ヒル兄弟も"druggist"と書いているので、やはり「薬屋」が調合済みの
ニスを扱っていたと考えていたようです。もちろん現在の「薬屋」とは違う
のでしょう。
It may be there was some druggist in the town who supplied all the
makers with the requisite materials; and he may even have mixed
the varnish and sold it ready-made
なお、ヒル兄弟によると、ピクが1792年4月14日付けの手紙でリュポに
調合済みのニスを譲って欲しいと頼んだということです。
またヴァイオリン製作者であるJohn Dilworth氏が「グァダニーニが引っ越すとニスが変わる」件について書いていました。Dilworth氏は菊田氏がヴィエニアフスキコンクールで優勝した際の審査員の一人でもあります。
The Cambridge Companion to the Cello
googleの書籍検索で該当部分が読めます。
Giovanni Battista Guadagnini
His varnish varied considerably, doubtless on account of his unsettled career which took him from his birthplace, Piacenza, to Milan, Cremona, Parma and, finally, Turin
大意:グァダニーニのニスは明らかに彼の引っ越しが原因で大きく変わりました。
Dilworth氏のサイト
ttp://www.johndilworthviolins.co.uk/index.php
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Re: ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年07月30日 09:44
投稿者:Xin(ID:QJMRgjA)
catgutさま
いわれれば、私もアルコールは薬屋で買っています。
(買うときに、記名しろと言われました)
余談ながら
キーワード”Science Stradivarius”でグルグルすると、さまざまな説がみつかりました。
なかでも「Wood density holds key to Stradivarius sweet sound」説は一考にあたいします。
ストラドが使用した木材の成長した当時の太陽の活動周期と木の密度
の関係は面白い説です。
ニスのように剥れ易く不安定なものに、長期間の音質を期待するには無理があります。ニスが剥れても、後世に再塗装されてもストラドはストラドです。肝心なのは土台です。
美人の薄化粧が一番ではないでしょうか。
一句
蝉しぐれ、今朝の女の薄化粧
いわれれば、私もアルコールは薬屋で買っています。
(買うときに、記名しろと言われました)
余談ながら
キーワード”Science Stradivarius”でグルグルすると、さまざまな説がみつかりました。
なかでも「Wood density holds key to Stradivarius sweet sound」説は一考にあたいします。
ストラドが使用した木材の成長した当時の太陽の活動周期と木の密度
の関係は面白い説です。
ニスのように剥れ易く不安定なものに、長期間の音質を期待するには無理があります。ニスが剥れても、後世に再塗装されてもストラドはストラドです。肝心なのは土台です。
美人の薄化粧が一番ではないでしょうか。
一句
蝉しぐれ、今朝の女の薄化粧
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Re: ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年07月30日 23:22
投稿者:飲茶(ID:IBCGGYI)
友達がとても良い新作ヴァイオリンを持っているのですが、その友人とあるヴァイオリン工房に行ったときに、職人(ヴァイオリン製作家兼修理調整職人)に友達のヴァイオリンを見せたところ、職人の第一声は「いい材料が使われてますねぇ。自分も一度こんな素晴らしい材料でヴァイオリンを作ってみたいものです。」でした。表板や裏板をコンコンと叩きながら、木目をじっくりと真剣に観察していた姿が印象的でした。その後、実際に弓で弾いて音を出していましたが、何度も材料の素晴らしさに言及していました。
手先が器用で精度の高い製作ができることが大事なのは当然ですが、良い材料を選べる「選択眼」も、ヴァイオリン製作では重要な要素だと思いました。
手先が器用で精度の高い製作ができることが大事なのは当然ですが、良い材料を選べる「選択眼」も、ヴァイオリン製作では重要な要素だと思いました。
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Re: ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年08月01日 01:31
投稿者:catgut(ID:JEd3dSk)
「The Violin Its Famous Makers and Their Imitators」という本を1880年前後に出版したGeorge Hartは、オイルニスはアルコールニスより音色が良いと考えていました。このため彼は「ニスが音色に何らかの影響があるという考え方はしばしば嘲笑される」(The idea that the
varnish of a Violin has some influence upon its tone has often been
ridiculed)と前置きしてから持論を述べています。
varnish of a Violin has some influence upon its tone has often been
ridiculed)と前置きしてから持論を述べています。
[37951]
Re: ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年08月02日 08:09
投稿者:catgut(ID:JEd3dSk)
最近出版されたばかりの「CDでわかるヴァイオリンの名器と名曲」田中千香士編著 ナツメ社刊にはこんな解説がありました(P42)。
ワニスはワニス屋が作っていた?
さて、このワニスこそが、名器の音色の秘密である、という考えがある。
ストラディヴァリは秘密のレシピで独自のワニスを調合していたという説も
あるが、製作者ではなく、その土地のワニス業者から仕入れていた可能性
も指摘されている。ワニスは、製作者よりも土地ごとによる違いが大きい
からである。
ワニスはワニス屋が作っていた?
さて、このワニスこそが、名器の音色の秘密である、という考えがある。
ストラディヴァリは秘密のレシピで独自のワニスを調合していたという説も
あるが、製作者ではなく、その土地のワニス業者から仕入れていた可能性
も指摘されている。ワニスは、製作者よりも土地ごとによる違いが大きい
からである。
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Re: ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年08月02日 16:03
投稿者:ブググ(ID:IBCGGYI)
catgut君、面白い本を紹介してくれてありがと。
「CDでわかる ヴァイオリンの名器と名曲」(ナツメ社) 税込価格2100円(A5判・160頁)
ttp://www.natsume.co.jp/category/d9784816345043.html
ヴァイオリンの魅力を、豊富な写真や図版とともに、オールカラーで紹介する1冊です。Part1では世界の名器を写真で比較、紹介します。Part2は監修者である田中千香士先生(元N響コンサートマスター)の魅力的な語り口による、ヴァイオリンに関する秘話です。Part3では名曲と名ヴァイオリニストの魅力に迫ります。付録CDには名曲の数々だけでなく、ヴァイオリニスト漆原啓子氏による、ストラディバリウスと他メーカーのヴァイオリンの弾き比べを収録します。時価数億円といわれる名器の音色をその耳で確かめてみて下さい!
凄く面白そうなので、速攻で買ってしまった。早く届かないかな。それにしても、最近は、ヴァイオリン関連の面白い本が、日本語でも出版されるようになって便利になったね。昔なら、英語の本しか売ってなかったから、今は本当に便利な時代になったものだと思うよ。
「CDでわかる ヴァイオリンの名器と名曲」(ナツメ社) 税込価格2100円(A5判・160頁)
ttp://www.natsume.co.jp/category/d9784816345043.html
ヴァイオリンの魅力を、豊富な写真や図版とともに、オールカラーで紹介する1冊です。Part1では世界の名器を写真で比較、紹介します。Part2は監修者である田中千香士先生(元N響コンサートマスター)の魅力的な語り口による、ヴァイオリンに関する秘話です。Part3では名曲と名ヴァイオリニストの魅力に迫ります。付録CDには名曲の数々だけでなく、ヴァイオリニスト漆原啓子氏による、ストラディバリウスと他メーカーのヴァイオリンの弾き比べを収録します。時価数億円といわれる名器の音色をその耳で確かめてみて下さい!
凄く面白そうなので、速攻で買ってしまった。早く届かないかな。それにしても、最近は、ヴァイオリン関連の面白い本が、日本語でも出版されるようになって便利になったね。昔なら、英語の本しか売ってなかったから、今は本当に便利な時代になったものだと思うよ。
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Re: ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年08月02日 18:17
投稿者:catgut(ID:JEd3dSk)
ちなみに「CDでわかるヴァイオリンの名器と名曲」には、漆原啓子さんがバッハ・シャコンヌの冒頭を、ご本人所有のストラド、Formaggia Vittorio 1992年、Mario Gadda 1971年の3提で弾いた録音をどれがどれだか当てるクイズがCDに収録されています。
このスレッドも長く続いてきましたが、念のためもう一度まとめておきます。
(1)ニスは音に影響がある
ニスは一般に白木より音を良くするのではなく、白木より音量を落したりこもった音にするという点で音に影響がある。
(2)優れたニスとは「柔軟」なニスである
優れたニスとは板の振動を極力妨げない性質を持つニスである。
(3)優れた製作者はニスの塗り方を工夫している
優れた製作者はニスを薄くかつ美しく塗るという難しいテーマに取り組んでいる。
(4)優れた調合済みのニスが存在するなら製作者が調合する必要はない
クレモナニスのように、優れた既存のニスが存在するならそれを製作者が使用するのは合理的な選択である。
このスレッドも長く続いてきましたが、念のためもう一度まとめておきます。
(1)ニスは音に影響がある
ニスは一般に白木より音を良くするのではなく、白木より音量を落したりこもった音にするという点で音に影響がある。
(2)優れたニスとは「柔軟」なニスである
優れたニスとは板の振動を極力妨げない性質を持つニスである。
(3)優れた製作者はニスの塗り方を工夫している
優れた製作者はニスを薄くかつ美しく塗るという難しいテーマに取り組んでいる。
(4)優れた調合済みのニスが存在するなら製作者が調合する必要はない
クレモナニスのように、優れた既存のニスが存在するならそれを製作者が使用するのは合理的な選択である。
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Re: ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年08月02日 19:56
投稿者:ブググ(ID:IBCGGYI)
日本リノキシンで売っているニスは、とても色艶が良いので、某ヴァイオリン製作家が独自に調合したニスよりも、見た目も音響も優れています。
ttp://www.nlinoxin.co.jp/index.htm
こういう優れたニスが自分で作れない人は、ニス屋(ニス専門店)からニスを買って、ニスの調合に無駄な時間をかけるかわりに、「塗り」の技術を向上させることに専念した方が良い結果が得られるでしょう。
この点ではcatgut君の意見(説)に賛成です。
自分で独自のニスを調合している、知り合いのあるヴァイオリン製作家は、けしてリノキシンを配合していることは教えてくれませんが、出来上がったヴァイオリンのニスの色艶からはリノキシンの力を借りていると思われます。
catgut君がヴァイオリンにニスを塗るとしたら、どんなニスを塗りますか?
自分ならリノキシンニスを塗ります。リノキシンニスなら、ロッカやプレッセンダよりも、もっと本物のストラドのニスの色艶に近い色艶が得られるからです。
ストラド>リノキシンニスが塗られた新作ヴァイオリン>プレッセンダやロッカ
※左に行けば行くほど本物のストラドのニスに近いことを表わしています。
ttp://www.nlinoxin.co.jp/index.htm
こういう優れたニスが自分で作れない人は、ニス屋(ニス専門店)からニスを買って、ニスの調合に無駄な時間をかけるかわりに、「塗り」の技術を向上させることに専念した方が良い結果が得られるでしょう。
この点ではcatgut君の意見(説)に賛成です。
自分で独自のニスを調合している、知り合いのあるヴァイオリン製作家は、けしてリノキシンを配合していることは教えてくれませんが、出来上がったヴァイオリンのニスの色艶からはリノキシンの力を借りていると思われます。
catgut君がヴァイオリンにニスを塗るとしたら、どんなニスを塗りますか?
自分ならリノキシンニスを塗ります。リノキシンニスなら、ロッカやプレッセンダよりも、もっと本物のストラドのニスの色艶に近い色艶が得られるからです。
ストラド>リノキシンニスが塗られた新作ヴァイオリン>プレッセンダやロッカ
※左に行けば行くほど本物のストラドのニスに近いことを表わしています。
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Re: ヴァイオリンの塗装について その3
投稿日時:2008年08月02日 23:33
投稿者:ムフフ(ID:kIJzVhA)
日本リノキシンで売っているニスは、リノキシンニスではないよ。
ベンゾエの芳香の強い、普通の良質のアルコールニスです。
リノキシンはリンシードを酸化加工したものなので匂いは強烈にリンシード臭がします。つまり油絵の具の臭いね。
日本リノキシンのニスをリノキシンニスにするには、別売りのリノキシンを添加する必要があります。
リノキシンは魔法のエキスなんかじゃないよ。素材のひとつに過ぎない。ちょっと有名だから半可通は飛びつきますよね。リノキシンの代わりにマスティックと言っても同じこと。
無知な素人ブググ様知ったかぶりは恥ずかしいですぞ m9(^Д^)プギャー
ベンゾエの芳香の強い、普通の良質のアルコールニスです。
リノキシンはリンシードを酸化加工したものなので匂いは強烈にリンシード臭がします。つまり油絵の具の臭いね。
日本リノキシンのニスをリノキシンニスにするには、別売りのリノキシンを添加する必要があります。
リノキシンは魔法のエキスなんかじゃないよ。素材のひとつに過ぎない。ちょっと有名だから半可通は飛びつきますよね。リノキシンの代わりにマスティックと言っても同じこと。
無知な素人ブググ様知ったかぶりは恥ずかしいですぞ m9(^Д^)プギャー
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