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鈴木政吉氏製作のバイオリンについて | ヴァイオリン掲示板

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楽器・付属品 22 Comments
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鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月19日 19:02
投稿者:HONEY(ID:FmdVNjc)
初めて投稿させて頂きますHONEYと申します。

恐縮ながら鈴木政吉氏製作のバイオリンについてですが、音のみを基準で考えて現在どのような評価をされているのでしょうか?
政吉氏が楽器を製作されていた戦前はまだ製作技術も試行錯誤の段階だったと思われます、もちろん材料も国内の木材を使用していたと考えられます。
スズキバイオリンのサイトを見ると昔の価格表が公開されています、政吉氏自信製作の楽器は当時の価格で1700円(!)となっています、ちなみに一番安い機種は8円ぐらいだったようです。
この価格の開きから見て当時の政吉氏製作の楽器は相当高価だったとうかがえます。はたして現在その楽器はどのような音色を奏でているのでしょうか?

現在国内製作者は海外で修行された方も多く、国際的にも高い評価をされています、バイオリン製作のパイオニアたる政吉氏の楽器は果たして現在どのような評価がされているか恐縮ながら知りたいわけでして、投稿させてもらいました。

もし当時の政吉氏の楽器を弾いたことがある方がいらっしゃいましたら是非意見を聞かせて頂きたい。

どうかご教授お願いします。
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Re: 鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月21日 21:53
投稿者:父娘Vn(ID:NCJBGIQ)
私の祖父もその時代にヴァイオリンを弾いていたらしいです。が、残念ながら、モノは残っていません。

それにしても、cutgutさん、さすがですね。博覧強記とはまさにこの人のことかと思いました。
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Re: 鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月21日 22:27
投稿者:catgut(ID:GUQGISA)
念のため確認したところ、鈴木政吉がピエトロ・グァルネリを手にしたのは1930年代ではなく大正15年(1926年)でした。ドイツのハイパーインフレのためドイツ人のご婦人から安く入手したことを鈴木鎮一は自伝に書いています。

以下に鈴木政吉が開発し、現在まで秘密にされている音質改善技術「済韻」についての記事があります。
ttp://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=00078675&TYPE=HTML_FILE&POS=1

即ちこれ等の楽器の新しい中は音が堅く且音量が乏しく本来の妙音を発するには数十年の永い間弾き込まねばならなかったのを、鈴木翁が約一ヶ月の工程により容易にかくの如き妙音を出すことが出来るようになったので鈴木翁はこの方法を「済韻」と名づけ一般の求めに応ずることにな
った。翁は語る「永い間弾き込まれた名作の楽器の胴や棹には微妙な木理の変化がある筈です。これに私が着眼したのです」

なお、無量塔蔵六氏は「済韻」については否定的な見解です。

私もぜひ無量塔氏の著作を世に出して頂きたいと思います。日本で最高レベルの価値のあるヴァイオリン関連書籍になると思います。
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Re: 鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月22日 04:18
投稿者:父娘Vn(ID:NCJBGIQ)
ヤマハのページにもそんな風な話があったような。
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Re: 鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月23日 01:03
投稿者:catgut(ID:GUQGISA)
私も済韻は笛の古化もできるということなので、強制的に振動を与えたか
なんらかの木質変化技術ではないかという気がします。

昭和初期の鈴木の製造工程について2代目社長の鈴木梅雄が書いた資料によると、当時は人工乾燥を行っています。

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木取った材料は風燥所へ運れます。風燥とは風通しよき所に於て自然的の乾燥をするのであります。此の期間が約一ヶ月、其れが終ると本乾燥室に入ります。乾燥室は無水状態の華氏九十度(摂氏32度)位より百二十度(摂氏49度)の熱気を与へて木材中の水分質は勿論、樹脂の乾燥を計るのであります。此の期間最少限度三ヶ月。其れが終わると再び風燥六ヶ月これで一通りの乾燥が終ります。但し高級のものに対しては此の方法が数度繰り返されます。当社の最高級のものの乾燥期間は前後五ヵ年以上のものを使用して居ります。
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現在ではヴァイオリンの木材の人工乾燥はタブー視される傾向が強いと思いますが、上記のように比較的低温なら実用的に乾燥できたのではないかと思います。
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Re: 鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月23日 21:05
投稿者:父娘Vn(ID:NCJBGIQ)
何だか笑っちゃうような話ですね。むらた氏に一票。
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Re: 鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月26日 10:47
投稿者:catgut(ID:GUQGISA)
徳永二男氏がモーストリー・クラシック 2008年5月号の対談でこう語っています。

徳永「わざと古くした木材を使った楽器を弾いたことがあるけど、本当にオールド楽器みたいないい音がするんだよね、これが。でも1年もしたら、だめになっちゃった」

間違いなく木質加工技術で「オールドの音」が得られるのですが、残念ながら従来技術では古化の進行を十分止められなかったようです。

そこでヤマハの木材改質技術が気になります。21世紀の済韻になるでしょうか。
ttp://www.yamahamusic.jp/shibuya-s/instrument/index.php?mode=detail&id=1727

A.R.E. [Acoustic Resonance Enhancement]とは、ヤマハが独自に研究・開発した木材改質技術のことです。ギターのボディ材にこの技術を施すことで、長年弾き込まれたような豊かな鳴りを実現します。A.R.E.技術は高度に制御された水と熱のみを利用し、木材のミクロな物性をより音響的に理想的な状態[=長年使い込まれた楽器の木材の分子構造と同様の状態]へコントロールするものです。その過程において薬剤等を一切使わない環境に優しい技術です。音響的に理想的な状態には、以下のような変化により到達します。
・低域の伸びが増大することにより、豊かな鳴りと太い音色が実現。
・高域においては、立ち上がりが大きくなるとともに減衰率が高くなることで、よりシャープなエッジ感が実現。同時に耳障りな成分が抑えられる。
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Re: 鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月26日 13:53
投稿者:HONEY(ID:JBaAhhc)
政吉ユーザー様
父娘Vn様
catgut 様

少し見ない間に濃密な書き込みがあったようで大変感謝いたします。

catgut様はさすがに大変お詳しいですね、感服しました。音に対する研究を追随されているようですので今後も報告が楽しみです。

鈴木の過去価格表に「済韻○○」という高級モデルはこれのことでしたか、当時としては画期的な技術だったのでしょう。
YAMAHAの技術はさすがに現代技術だけあって科学的に研究されているようです。しかしYAMAHAのバイオリンはあまり好評価を耳にしないので、即効性はないということでしょうか?

政吉ユーザー様のレポートは大変参考になりました、実体験からの評価ですので大変信憑性が高いです。№7~11ぐらいで状態がよければそれなりに味がある音ということですね。

無量塔氏の原稿は世に出ないと今後のバイオリン業界にとって大きな損失です、是非出版していただきたい。
もしこの掲示板を閲覧しているかたの中に出版業界、またはつてのある方がいらっしゃいましたら是非このプロジェクトを進めて頂きたい、貴重な資料をうずもれたままにするのはあまりに惜しいですから。

皆様の有益なご意見非常に参考になります、重ねて御礼申し上げます。
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Re: 鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月26日 13:57
投稿者:HONEY(ID:JBaAhhc)
追伸

YAMAHAの技術はまだバイオリンには応用されていないのですかね?ギターからの技術転用ならそうそう難しくないと思うのは素人考えでしょうか。
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Re: 鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月26日 19:15
投稿者:父娘Vn(ID:MXRDY0Y)
江崎さんやめちゃったから、どうでしょう。
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Re: 鈴木政吉氏製作のバイオリンについて

投稿日時:2008年10月26日 20:36
投稿者:catgut(ID:GUQGISA)
鈴木梅雄は「下級・中級・上級尚最後迄に細密なる試験に依って該当の号数を割り振るのであります」と書いているので、ある程度の範囲では作った後に号数を決めていたようです。確かに号数が高くてもあまり美しくないものがあります。音で号数を振ったのでしょうか。

無量塔蔵六氏は岩波新書「ヴァイオリン」に以下のように書いています。

安い弦楽器の響板には、戦前の鈴木ヴァイオリンでは栂(ツガ)を多く使用しました。この材木で製作されたものは比較的音が出やすく、そして音量があったので、鈴木ヴァイオリン王国を築くきっかけにもなったのでしょう。世間ではこの材木から作られた独得の音のするヴァイオリンを「鈴木トーン」といって馬鹿にする人もいます。この栂という材木はコストの点から、普及品つまり量産用としてもう一度見なおしてもよいかもしれません。

裏板については鈴木バイオリンとは書いていませんが、以下のような記述があります。

楓(かえで)によく似た縞模様をもち、材質もヨーロッパの楓にかなり近いものに栃(とち)があります。価格が楓にくらべて安価であるため、戦前によく使用され、それらのヴァイオリンをいまでもよく見うけます。材質的に腰が弱く、そのためか音に力強さがなくひよわです。

鈴木梅雄は昭和初期に北海道のエゾ松と三重と和歌山の県境の楓を使っていると書いていますが、低グレード品には無量塔氏が書かれたような材質も使われているかもしれません。
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