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ストラディヴァリのニス | ヴァイオリン掲示板

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雑談・その他 70 Comments
[42049]

ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月08日 22:31
投稿者:catgut(ID:EIVkJFQ)
maestronet掲示板の以下のスレッドのpost #76にストラディヴァリのニスの調査結果のPDFが添付されていました。

ttp://www.maestronet.com/forum/index.php?showtopic=320849&st=60

Echard_2010_Angew_English.pdf ( 482.22K )

シンクロトロンとか、島津製作所の分析装置とかを使っていて、つい笑ってしまうくらい凄い調査内容です。
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6 / 8 ページ [ 70コメント ]
【ご参考】
[42146]

Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月27日 23:49
投稿者:catgut(ID:QUCIGJM)
私もThe Stradivari Legacyは高価なので買っていませんが、フェーバーの
本に遺言書の一部が紹介されています。遺言書によるとオモボノよりもフランチェスコのほうが「ストラディヴァリ工房」での製作に深くかかわっていたようです。

なお、フェーバーは当時の貨幣を現在の英国ポンドの価値に換算するために使用した資料と考え方を、p302-p303の2ページにわたって記載しています。

遺言書も参考にしたのだろうと思いますが、1698年以降はスクロールは
ストラディヴァリ本人以外が製作し、1720年頃以降はf孔もストラディヴァリ
本人以外が切っているという推定も出ています。実に面白い本なのでぜひ
お読みください。
[42148]

Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月28日 17:53
投稿者:カルボナーレ(ID:EnE4GYc)
トビー フェイバー「ストラディヴァリウス:5挺のヴァイオリンと1挺のチェロと天才の物語」は持っていますが、そこに書かれている通り、”物語”であり、フィクションとノンフィクションの境目の推理ものと私はとらえています。肩肘はらずに読むには、面白い本だと思いますよ。

catgutさんのいつもの論法と近いところがあり、別の資料の一部分を持ってきて、推理を行い、「***」に違いないという形で、大胆な提案はするが、最後の結論はぼかすという形のまとめ方となっています。

読み物としては面白いと思っており、中で紹介された資料で目新しい物は参考にさせてもらっていますが、本の中でそこから導きだされたものは、あくまでも筆者の主観、推測、想像と解釈しています。あるいは、定説から離れた切り口を考えるためのヒントとしてとらえています。

現在における貨幣価値への換算については、昔のポンドと現在のポンドの換算表(1750年~1998年)を使って1630~1750はまったく貨幣価値は変化なしとして1750年の値を共用し、一方ポンドとイタリア通貨(リラなど)との換算は1680年の値に固定し、それにより単純化をしていると書かれていますので、1680年から1750年までの、ストラディヴァリが活躍した間の貨幣価値の変化はまったく考慮されていない値です。

また、説明の中では、1680年頃は1台400ポンド(*ここでのポンドは現在のポンド)の半分程度(従って200ポンド)でしかなかったはずと書いてあり、しかし40000ポンドの家を同年に4年で支払う契約で購入したという事実も書かれています。(楽器製作ではない仕事をして稼いでいたのではという彼の推測も若干書かれています。) 1714年には50000ポンドをパン屋と金貸しのための投資したとか、息子のパオロを仕事につかせるため80000ポンド払った、とかも書かれています。

パオロが残されたストラディヴァリの道具一式と図面一式を1000ポンドで売ろうとしたが、コジオに200ポンドほどに値切られ、それで手をうった、という話の後に、コジオが1台400ポンドで楽器を買えたという話をしても、それが当時の一般的な値段であったとはとても思えませんね。

事実は事実、推定は推定、仮説は仮説、想像は想像、と明確にして、考え、理解し、話すことが重要です。

なお、ストラディヴァリウス”工房”であったことについては、個人的には私もそうであったと思っています。
[42149]

Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月28日 23:29
投稿者:catgut(ID:QUCIGJM)
値段や工房生産の話はフェイバーの説ではなく、The Stradivari legacy
の著者が遺言書をベースに述べているようです。下記のように一部は
googleの書籍検索でスベニット表示で読めます。

17世紀から19世紀の前半までは、西ヨーロッパは割と物価が安定した時代だったそうです。

filippiという単位はよくわかりませんが、当時は1ダカット金貨が約3.5グラムで、多少変動があるもののおよそ10リラ=1ダカットだったそうです。つまり、1リラは金0.35gの価値であるため、166リラは金58グラム分ということになります。現在の金価格が1グラム=3500円とすると、166リラは20万3000円です。もちろん金価格は変動しますが、だいたいの価格のイメージはつかめるでしょう。

-----
The figure of 1000 lire assigned to six violins, which is found again in
the bequest to Omobono (see p.38) is of obvious historic importance
insofar as it gives an approximate notion of Stradivari's own valuation
of his work.

Unfortunately for the purposes of comparison, the Cremonese lira
had only a relative value to gold and silver (see note 21 above). It is
not known how much Stradivari charged clients for his violins
or if he had different price categories, or if in the bequests to his
sons he was thinking in "wholesale" or "retail" terms. Dividing 1000
Cremonese lire by six yields the not very round number of about 166
lire and 12 soldi per violin, or slightly less than 12 silver filippi.
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[42150]

Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月29日 09:21
投稿者:catgut(ID:QUCIGJM)
私は史実のストラディヴァリは以下のような方法でレベルの高い楽器を
製作したのだろうと思います。

・物理的性質の似た木から多くの表板、裏板を作った。
現代の製作家と違い、1本の丸太から多数の楽器を製作しているため
改善すべき点をつかみやすかったのだろう。
・若い頃に多くの大胆な実験を重ねて安定して良い結果が出る方法を習得した。
・音にほとんど関係ない塗装には時間を使わなかった。
・最盛期には音に関係ないスクロール製作などは他人に任せ、本人は音にかかわる部分に注力した。
・製作数が多いので「あたり品」の絶対数が多かった(はずれも少なくないとクライスラーが述べている)。

以下の点も重要です。
・技量の高い修復家(ヴィヨームなど)がモダン化改造を行った。
・経年変化でより好ましい深みのある音になった。
・現在もプロが使用する場合は最高レベルの調整家が調整を行っている。
[42152]

Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月29日 11:57
投稿者:カルボナーレ(ID:EnE4GYc)
>・物理的性質の似た木から多くの表板、裏板を作った。現代の製作家と違い、1本の丸太から多数の楽器を製作しているため改善すべき点をつかみやすかったのだろう。
<= 一部にはそういうもののありますが、多くがそうであるという資料を私は知りません。何を根拠にそのように言っているのでしょう。デスジェスの多くの楽器の表板が一本の大木の丸太からとられたものであることは有名ですが、ストラディヴァリウスについてはそのような話は聞いていません。
なお、自身の森を持ち、そのようなことができるモラッシ一族は恵まれているのでしょうね。

>・音にほとんど関係ない塗装には時間を使わなかった。
<= これは違うでしょう。家具職人から出発し、まずは装飾や美観で成り上がって行ったストラディヴァリが、外観を疎かにするはずがありません。見た目が美しいから貴族も惚れ込み、また美しいから大事にされて後世に多くの楽器が生き残ってきていると考えるべきでしょう。美的感覚を持った外装の達人が、塗装を疎かにするはずがありません。

>・最盛期には音に関係ないスクロール製作などは他人に任せ、本人は音にかかわる部分に注力した。
<= かもしれないが、そうかどうかはわからない。根拠をお知らせください。ストラドのスクロールは他にはない独特の表情をもつ顔なのでこだわったかもしれませんよ。今、機械加工ですませるようなところ(本体、ネック、スクロールなどの荒削り、外形カットなど)をまずは他人にやらせるというのが基本ではないでしょうか。

>・製作数が多いので「あたり品」の絶対数が多かった(はずれも少なくないとクライスラーが述べている)。
<= これも意味不明。製作数と当たり品には相関はないと思います。製作数が多いとあたりが極めて少なくなるというのもまた真実です。製作数を少なくし丁寧につくったからあたり品が多いという言い方も正しいそうです。

ストラディヴァリの80年近い楽器製作の中での、時間軸での変化、工房での楽器のグレード(隣のおっさんからの依頼品から、貴族、王族からの依頼品まで)の幅など、非常に振り幅が大きいものを、ひとくくりにして語ろうとするから話が発散するし、おかしな結論になるのだと思います。

あとの項目に対しては、ヴァイオリンにおける一般常識を書いたものであり、特に反論はありません。
(”深みのある音”というものを、catgutさんが実感としてわかっていればよいのですが。)
[42153]

Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月29日 18:47
投稿者:catgut(ID:QUCIGJM)
ストラディヴァリの楽器でも同じ木から作られたと推定されているものが
あります。たとえば以下では4挺の楽器が同じ木から作られたと推定され
ています。

ttp://www.cozio.com/Instrument.aspx?id=228

Dendrochronological analysis: John C. Topham, Redhill, September 4, 2001. "The dendrochronological analysis of the table reveals that the youngest growth rings on each side date from 1703 and 1705. This correlates well with other Stradivari instruments of the period, notably the 1711 Parke, the 1713 Gibson-Huberman and another 1715 violin. John Topham also notes that it is probable that all of the pieces from these four violins come from the same tree."

また、デル・ジェスのスクロールのほとんどが本人の製作ではないことはすでに常識といってもいいかもしれません。父親や妻が作ったのではないかと言われています。確かクレモナの製作学校でもそう教えられていると聞きました。
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Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月29日 23:10
投稿者:カルボナーレ(ID:EnE4GYc)
裏板については、同じく4台ほど同じ材木から作ったという記述が、フェイバーの著作にもありましたね。またカルテット(4台セット)などを作る時に同じ材木から作られたものは見た事があります。しかし私はそれらは1100台のほんの一部だと認識してます。

catgutさん。質問はよくお読みください。明快な回答をよろしく。再度転記します。
>・物理的性質の似た木から多くの表板、裏板を作った。現代の製作家と違い、1本の丸太から多数の楽器を製作しているため改善すべき点をつかみやすかったのだろう。
<= 一部にはそういうもののありますが、多くがそうであるという資料を私は知りません。何を根拠にそのように言っているのでしょう。
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Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月30日 00:10
投稿者:catgut(ID:QUCIGJM)
私の知る限り、現代の(量産でない)ヴァイオリン製作者は、1本の木からかなりの数の楽器を作る例は少ないと思います。物理的性質が近い材料であれば何度も削っているうちに「学習効果」は飛躍的に上がるでしょう。表板と裏板の削りを数多く経験していれば、いやでも「良い音」にするためのノウハウが身につくでしょう。

デル・ジェスの例でも明らかなように、当時のヴァイオリン製作者はある程度の大きな「まとまり」で木を買って製作していたのだろうと思います。
現代では安価な量産楽器との「差別化」のために、高価なマスターメイド楽器は、少なくとも表向きは一人の製作者が一貫して手がけたとされるものが多いようですが、ストラディヴァリの時代には最も音が良くかつ美しくするためには、むしろ分業製作のほうが良いと考えられていたのかもしれません。

ちなみに有名なヒルの本でも、婉曲にいまいちのストラディヴァリがあることが示唆されています。もちろん、ストラディヴァリの責任とは限らずモダン化改造の「失敗」によるものかもしれません。
[42156]

Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月31日 17:22
投稿者:カルボナーレ(ID:EnE4GYc)
[42155]
[42155]

Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2009年12月30日 00:10
投稿者:catgut(ID:QUCIGJM)
私の知る限り、現代の(量産でない)ヴァイオリン製作者は、1本の木からかなりの数の楽器を作る例は少ないと思います。物理的性質が近い材料であれば何度も削っているうちに「学習効果」は飛躍的に上がるでしょう。表板と裏板の削りを数多く経験していれば、いやでも「良い音」にするためのノウハウが身につくでしょう。

デル・ジェスの例でも明らかなように、当時のヴァイオリン製作者はある程度の大きな「まとまり」で木を買って製作していたのだろうと思います。
現代では安価な量産楽器との「差別化」のために、高価なマスターメイド楽器は、少なくとも表向きは一人の製作者が一貫して手がけたとされるものが多いようですが、ストラディヴァリの時代には最も音が良くかつ美しくするためには、むしろ分業製作のほうが良いと考えられていたのかもしれません。

ちなみに有名なヒルの本でも、婉曲にいまいちのストラディヴァリがあることが示唆されています。もちろん、ストラディヴァリの責任とは限らずモダン化改造の「失敗」によるものかもしれません。
では、すべて「思います」や「かもしれません」という表現になりましたね。
思うのは個人の勝手ですし、可能性を考えることも個人の勝手ですし、掲示板へ思いつきを書き込む事も反則ではありません。
しかし、以前書き込ませていただいた通り、2010年以降は、
- 事実
- 事実からの他人の解釈
- 事実に対する自分の感想
- 他人の解釈に対する自分の感想
- 論理的裏付けに基づく自分の仮説
- 自分の勝手な想像
などを、ぜひ混同なさらぬようご配慮の上、書き込みをお願いします。

それでは、よいお年を!
[42161]

Re: ストラディヴァリのニス

投稿日時:2010年01月04日 00:11
投稿者:catgut(ID:QUCIGJM)
現代ではストラディヴァリが一人で楽器を製作したという思い込みからか、
分業で製作されたヴァイオリンは分業で製作されたというだけの理由で
一段低く見られるように思います。

しかし例えば現代のトップレベルの4人の製作者が工房を作って、それぞれ
・ボディ製作
・ネック製作
・ニス
・セットアップ
などに専門化し、分業でヴァイオリン製作を行えば一人で行うよりもずっと多くの経験を積むことでトータルでより完成度の高い楽器を、より多く製作できるのではないでしょうか。

アマティ工房ではすでに弟子がアマティの名前でヴァイオリン製作をしていたと考えられているのですから、ストラディヴァリが信頼できる息子や弟子と分業製作していたとしても何ら不思議はありません。
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