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駒と魂柱の調整実験について
投稿日時:2007年05月07日 03:57
投稿者:catgut(ID:F4QTFBQ)
駒と魂柱の調整の実験をしてみましたので、ご参考としていくつか気付いた点をまとめて書きたいと思います。過去ログを検索すると結構突っ込んだ話があったようですね。駒のから揚げとか・・
エルマンは自ら魂柱調整を好んで行ったそうですが、演奏者の立場でもあまり高価でない楽器でいろいろ試してみると得るところが多いと思います。
ヴァイオリン関係の相談で良くみかけるのが「楽器が響かない」「E線がうるさい」というものです。多くの場合「楽器が響かない」のは楽器自体の問題とされ、「E線がうるさい」のは楽器自体の問題か、弦の問題とされることが多いようです。しかし実験結果からすると駒と魂柱の調整である程度は改善できるのではないかと思います。
なお今回はあくまで実験であり特定の楽器で「駒と魂柱の調整でどんなことが起きるか」を試した例に過ぎませんので、その点ご了承お願いします。
エルマンは自ら魂柱調整を好んで行ったそうですが、演奏者の立場でもあまり高価でない楽器でいろいろ試してみると得るところが多いと思います。
ヴァイオリン関係の相談で良くみかけるのが「楽器が響かない」「E線がうるさい」というものです。多くの場合「楽器が響かない」のは楽器自体の問題とされ、「E線がうるさい」のは楽器自体の問題か、弦の問題とされることが多いようです。しかし実験結果からすると駒と魂柱の調整である程度は改善できるのではないかと思います。
なお今回はあくまで実験であり特定の楽器で「駒と魂柱の調整でどんなことが起きるか」を試した例に過ぎませんので、その点ご了承お願いします。
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[ 6コメント ]
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Re: 駒と魂柱の調整実験について
投稿日時:2007年05月07日 04:00
投稿者:catgut(ID:F4QTFBQ)
実験 その1
魂柱の長さ(きつさ)を少しずつ変えて音がどのように変化するか確認する。
(1)弦を外して楽器を強く振っても魂柱が倒れない程度の長さ(胴の上下より2mm程度長い)
(2)弦を外してもかろうじて立っている。(胴の上下より0.2mm程度長い)
(3)弦を外すと立たない(弦を軽く張った状態で立てる)
(1)は明らかに硬くあまり響かない音になりました。弾いていてあまり心地よくありませんが、もしかすると「遠達性」はあるのかもしれません。通販などの安い楽器は魂柱が倒れないようにこのような調整がされているものが多いのではないかと思います。
(2)は楽器全体が震える大変良い響きになりました。
(3)は響きすぎて芯が少し弱く感じれられましたが、それほど悪くは感じませんでした。
実験 その2
駒を最も厚い状態から少しずつ薄くしていき、音がどのように変化するか確認する。また同時に少しずつ駒をトリミング(足、ウエスト部分)していく。
(1)最も厚くトリミングしていない状態
(2)標準的な厚み・トリミング状態
(3)最も薄くトリミングし過ぎた状態
(1)は振動が抑制されているようで固めの音になりました。
(2)は最もバランスのいい音になりました。
(3)は駒の左右を上下から親指と人差し指で強く押えると2,3ミリたわむ状態で、明らかにE線がうるさく(耳が痛く)なりました。またG,D線は音が柔らかくなりすぎて芯のない音になりました。
魂柱の長さ(きつさ)を少しずつ変えて音がどのように変化するか確認する。
(1)弦を外して楽器を強く振っても魂柱が倒れない程度の長さ(胴の上下より2mm程度長い)
(2)弦を外してもかろうじて立っている。(胴の上下より0.2mm程度長い)
(3)弦を外すと立たない(弦を軽く張った状態で立てる)
(1)は明らかに硬くあまり響かない音になりました。弾いていてあまり心地よくありませんが、もしかすると「遠達性」はあるのかもしれません。通販などの安い楽器は魂柱が倒れないようにこのような調整がされているものが多いのではないかと思います。
(2)は楽器全体が震える大変良い響きになりました。
(3)は響きすぎて芯が少し弱く感じれられましたが、それほど悪くは感じませんでした。
実験 その2
駒を最も厚い状態から少しずつ薄くしていき、音がどのように変化するか確認する。また同時に少しずつ駒をトリミング(足、ウエスト部分)していく。
(1)最も厚くトリミングしていない状態
(2)標準的な厚み・トリミング状態
(3)最も薄くトリミングし過ぎた状態
(1)は振動が抑制されているようで固めの音になりました。
(2)は最もバランスのいい音になりました。
(3)は駒の左右を上下から親指と人差し指で強く押えると2,3ミリたわむ状態で、明らかにE線がうるさく(耳が痛く)なりました。またG,D線は音が柔らかくなりすぎて芯のない音になりました。
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Re: 駒と魂柱の調整実験について
投稿日時:2007年05月07日 04:09
投稿者:catgut(ID:F4QTFBQ)
結局、この実験では一般に言われている「標準的な調整」が正しいことを
再確認することとなりました。
駒と魂柱の調整は相互依存しているので、どちらを先にすべきかということ
は難しいのですが、どちらかといえば駒を調整する前提として魂柱の調整が適切であることが必要と思われます。魂柱調整が適切でないと駒の調整結果があまり音に反映されません。
もちろん楽器や好みによって調整の幅は大きいと思いますので、厚めの
駒や薄めの駒、きつめの魂柱が最適な場合もあると思います。あくまで
特定の楽器での傾向です。この実験についてなにかご質問やご意見があればコメントをお願いします。
再確認することとなりました。
駒と魂柱の調整は相互依存しているので、どちらを先にすべきかということ
は難しいのですが、どちらかといえば駒を調整する前提として魂柱の調整が適切であることが必要と思われます。魂柱調整が適切でないと駒の調整結果があまり音に反映されません。
もちろん楽器や好みによって調整の幅は大きいと思いますので、厚めの
駒や薄めの駒、きつめの魂柱が最適な場合もあると思います。あくまで
特定の楽器での傾向です。この実験についてなにかご質問やご意見があればコメントをお願いします。
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Re: 駒と魂柱の調整実験について
投稿日時:2007年05月07日 07:02
投稿者:pochi(ID:SBdYcmA)
魂柱のきつさに関しては、ここにあります。
ttp://www.sasakivn.com/werkstatt/report/stimmstockhoehe.htm
駒の厚さは、楽器の特質と、駒自身の材質との関連があるので、一般化は出来ません。硬くて薄い駒の方が発音が良くて、大きな音が出ますが、表板が柔らかい楽器には合わない場合があります。
ttp://www.sasakivn.com/werkstatt/report/stimmstockhoehe.htm
駒の厚さは、楽器の特質と、駒自身の材質との関連があるので、一般化は出来ません。硬くて薄い駒の方が発音が良くて、大きな音が出ますが、表板が柔らかい楽器には合わない場合があります。
[33433]
Re: 駒と魂柱の調整実験について
投稿日時:2007年05月07日 13:39
投稿者:catgut(ID:F4QTFBQ)
pochiさま、コメントありがとうございます。
佐々木氏の「きつさ」についてのレポートはすでに読んでいました。
目の付け所が大変良いと思いました。
私も以前から感じていたことですが、
「箱鳴り」=「胴体が共鳴振動して胴体内部で残響音がする」ことだとすれば、それは奏者とごく近くの聴衆にしか聞えず、「ホールでの残響音」とははっきり区別できます。つまり、残響のない部屋ではまったく面白みのない音に調整した楽器が、良い残響のあるホールでは最高の楽器になる可能性はあり得ると思います。この場合、きつめの調整が有利ということになります。
ただ、佐々木氏のレポートは少し私の実験とは異なるところがあります。
・佐々木氏は「(表板と裏板の幅より)標準は+0.8mm付近」と書かれていますが、個人的には少し長めに思われます。
佐々木庸一はソースを明示していませんが「魔のヴァイオリン」P188で
「楽器の表板を二分の一ミリ持ち上げる長さがいちばん適当とされている。魂柱は長すぎると音が鋭く薄っぺらになる」とし、0.5mmを標準としています。ヘロン・アレンの「バイオリン製作 今と昔」などいくつかの文献で表板と裏板の幅に合わせると書かれていたと記憶します。すべての弦を緩めると魂柱が倒れるような調整もよく聞きます。
・「緩め」の時音が「ぼやける」傾向があると佐々木氏は書かれているが、私の実験では「ぼやける」のは魂柱が短すぎる(表板と裏板の幅より短い)場合です。
これらはもしかすると佐々木氏と私の測定の仕方(私のほうがもちろんいい加減)の差によるだけで、実際はほぼ同じ結果となっているのかもしれません。
なお、表板と裏板の幅にぴったり合わせた場合、確かにきつい場合に比べて「箱鳴り」=「胴体内部での残響音」は増えますが、全体としての音質も改善されるようの思います。さすがに7メートルでは試していませんが、3メートルの距離では明らかに音質が改善されて聞えました。7メートル以上では判別できなくなるのかもしれませんが、趣味や室内楽で使う場合には確実に良いように思われます。
佐々木氏の「きつさ」についてのレポートはすでに読んでいました。
目の付け所が大変良いと思いました。
私も以前から感じていたことですが、
「箱鳴り」=「胴体が共鳴振動して胴体内部で残響音がする」ことだとすれば、それは奏者とごく近くの聴衆にしか聞えず、「ホールでの残響音」とははっきり区別できます。つまり、残響のない部屋ではまったく面白みのない音に調整した楽器が、良い残響のあるホールでは最高の楽器になる可能性はあり得ると思います。この場合、きつめの調整が有利ということになります。
ただ、佐々木氏のレポートは少し私の実験とは異なるところがあります。
・佐々木氏は「(表板と裏板の幅より)標準は+0.8mm付近」と書かれていますが、個人的には少し長めに思われます。
佐々木庸一はソースを明示していませんが「魔のヴァイオリン」P188で
「楽器の表板を二分の一ミリ持ち上げる長さがいちばん適当とされている。魂柱は長すぎると音が鋭く薄っぺらになる」とし、0.5mmを標準としています。ヘロン・アレンの「バイオリン製作 今と昔」などいくつかの文献で表板と裏板の幅に合わせると書かれていたと記憶します。すべての弦を緩めると魂柱が倒れるような調整もよく聞きます。
・「緩め」の時音が「ぼやける」傾向があると佐々木氏は書かれているが、私の実験では「ぼやける」のは魂柱が短すぎる(表板と裏板の幅より短い)場合です。
これらはもしかすると佐々木氏と私の測定の仕方(私のほうがもちろんいい加減)の差によるだけで、実際はほぼ同じ結果となっているのかもしれません。
なお、表板と裏板の幅にぴったり合わせた場合、確かにきつい場合に比べて「箱鳴り」=「胴体内部での残響音」は増えますが、全体としての音質も改善されるようの思います。さすがに7メートルでは試していませんが、3メートルの距離では明らかに音質が改善されて聞えました。7メートル以上では判別できなくなるのかもしれませんが、趣味や室内楽で使う場合には確実に良いように思われます。
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Re: 駒と魂柱の調整実験について
投稿日時:2007年05月08日 00:48
投稿者:catgut(ID:F4QTFBQ)
ご参考として、私が魂柱調整した際の道具と手順を以下に示します。いろいろなやり方があると思います。目的の場所に立てるだけなら10分程度で立てられるようになりました。
■魂柱調整に使用する道具
・魂柱立て(通販で800円程度)、針金のハンガー等でも代用可能
・スチール製定規(15cm)
・ピンセット2本(1本は切手用の先が曲がったものが良い)
・カッターの刃一片
・紙やすり
・セロテープ
■材料
スプルース木片または市販の魂柱用スプルース丸棒(直径約6mm)
■魂柱の作り方
スプルースの木片の木目の良いところを四角く切り出し、紙やすりで角を取り丸くする。電動ミニルーターで削ってもよい。まずは既存の魂柱と長さ・上下のカーブを合わせておき、その後微調整する。
■魂柱の取り出し方
(1)弦を外し、もともと立っている魂柱の位置を記録し、スチール製定規で魂柱を倒す。
(2)楽器を揺らしてf孔の下側近くに魂柱を持ってくる。f孔の下側から切手用ピンセットを入れて魂柱をはさむ。これで魂柱を持ち上げて、普通のピンセットではさんでf孔から引き出す。慣れると30秒程度で確実に取れるようになる。
■魂柱の立て方
(1)魂柱立ての本来魂柱を刺す側にセロテープでカッターの刃の一片を巻きつける。これは魂柱立てを砥石で削ってもカッターの刃ほどに薄くするのは難しいこと、魂柱立てに常に鋭利な刃があると怪我をする恐れがあるため。
(2)魂柱を刺して楽器の向かって左側のf孔から内部に差し込む。
慣れないうちや、厳密に立てたい場合はエンドピンを外してエンドピンから中を覗くと魂柱が直立しているかどうかよくわかる(f孔側からも確認する)。
ある程度慣れて調整を繰り返す場合は、魂柱をf孔の左右方向から見ることと、向かって右側(魂柱側)のf孔の上側の穴から下に向けて覗くことで、魂柱がほぼ直立しているかどうか確認できる。
(3)目的の位置の近くに魂柱を立てたら、魂柱立てに魂柱が刺さったままの状態でスチール製定規を使用して目的の位置に魂柱を寄せる。目的の位置に達したら、魂柱立てに魂柱が刺さった状態のまま弦を軽く張ってしまう。これにより魂柱には上下から圧力がかかるので、魂柱立てを魂柱
に強めに刺していても容易に引き抜くことができる。
魂柱がきつく立てられていない状態で魂柱立てから魂柱を抜くのが難しいこと、魂柱立てから抜いた状態で魂柱立てで位置調整すると魂柱が倒れたり回転して隙間ができやすいことから、このような方法にしています。
■魂柱調整に使用する道具
・魂柱立て(通販で800円程度)、針金のハンガー等でも代用可能
・スチール製定規(15cm)
・ピンセット2本(1本は切手用の先が曲がったものが良い)
・カッターの刃一片
・紙やすり
・セロテープ
■材料
スプルース木片または市販の魂柱用スプルース丸棒(直径約6mm)
■魂柱の作り方
スプルースの木片の木目の良いところを四角く切り出し、紙やすりで角を取り丸くする。電動ミニルーターで削ってもよい。まずは既存の魂柱と長さ・上下のカーブを合わせておき、その後微調整する。
■魂柱の取り出し方
(1)弦を外し、もともと立っている魂柱の位置を記録し、スチール製定規で魂柱を倒す。
(2)楽器を揺らしてf孔の下側近くに魂柱を持ってくる。f孔の下側から切手用ピンセットを入れて魂柱をはさむ。これで魂柱を持ち上げて、普通のピンセットではさんでf孔から引き出す。慣れると30秒程度で確実に取れるようになる。
■魂柱の立て方
(1)魂柱立ての本来魂柱を刺す側にセロテープでカッターの刃の一片を巻きつける。これは魂柱立てを砥石で削ってもカッターの刃ほどに薄くするのは難しいこと、魂柱立てに常に鋭利な刃があると怪我をする恐れがあるため。
(2)魂柱を刺して楽器の向かって左側のf孔から内部に差し込む。
慣れないうちや、厳密に立てたい場合はエンドピンを外してエンドピンから中を覗くと魂柱が直立しているかどうかよくわかる(f孔側からも確認する)。
ある程度慣れて調整を繰り返す場合は、魂柱をf孔の左右方向から見ることと、向かって右側(魂柱側)のf孔の上側の穴から下に向けて覗くことで、魂柱がほぼ直立しているかどうか確認できる。
(3)目的の位置の近くに魂柱を立てたら、魂柱立てに魂柱が刺さったままの状態でスチール製定規を使用して目的の位置に魂柱を寄せる。目的の位置に達したら、魂柱立てに魂柱が刺さった状態のまま弦を軽く張ってしまう。これにより魂柱には上下から圧力がかかるので、魂柱立てを魂柱
に強めに刺していても容易に引き抜くことができる。
魂柱がきつく立てられていない状態で魂柱立てから魂柱を抜くのが難しいこと、魂柱立てから抜いた状態で魂柱立てで位置調整すると魂柱が倒れたり回転して隙間ができやすいことから、このような方法にしています。
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Re: 駒と魂柱の調整実験について
投稿日時:2007年05月11日 03:52
投稿者:catgut(ID:IZWSMAY)
以下、私の感じた点を補足します。
・魂柱は一般には年輪の細かい古いスプルースが良いという説があるが、
あまり実感できない。あえて言えば表板と魂柱が面で接触しやすいという
観点では表板と硬度が近いか、わずかに柔らかいものが良いのでは?
・駒もある程度古くて乾燥したものが良いとされ(古過ぎるものは柔軟性がなく良くないとされる)確かにその通りだと思うが、実際には駒の形状(削り方)によって大きく音が左右される。
・駒と魂柱の調整は相互に関係しているが、どちらかといえば駒を調整
する前提として魂柱の調整をしたほうがよい。魂柱調整が適切でないと
駒の調整結果がよく反映されない。
・ウルフ音の軽減に駒の調整がある程度有効。
なお、歴史的には魂柱を2本立てたり、駒の足を3つにした試みが
あるそうです。
・魂柱は一般には年輪の細かい古いスプルースが良いという説があるが、
あまり実感できない。あえて言えば表板と魂柱が面で接触しやすいという
観点では表板と硬度が近いか、わずかに柔らかいものが良いのでは?
・駒もある程度古くて乾燥したものが良いとされ(古過ぎるものは柔軟性がなく良くないとされる)確かにその通りだと思うが、実際には駒の形状(削り方)によって大きく音が左右される。
・駒と魂柱の調整は相互に関係しているが、どちらかといえば駒を調整
する前提として魂柱の調整をしたほうがよい。魂柱調整が適切でないと
駒の調整結果がよく反映されない。
・ウルフ音の軽減に駒の調整がある程度有効。
なお、歴史的には魂柱を2本立てたり、駒の足を3つにした試みが
あるそうです。
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